「科学鑑定」の盲信

一瞬だけ,日本でもマトモな(?)冤罪事件の報道が話題を占めましたが,
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 栃木県足利市で1990年、保育園の女児(当時4)が殺害された「足利事件」で服役していた菅家利和さん(62)が釈放されたことを受け、警察庁と栃木県警は5日、当時の捜査を検証する調査チームをそれぞれ発足させた。取り調べの状況やDNA型鑑定の経緯などについて、捜査資料や公判記録を精査するほか、捜査員からの聞き取りも検討する。

 警察庁がこの種のチームを設けるのは、強圧的な取り調べやずさんな捜査が明らかになり、無罪判決が確定した鹿児島の公選法違反事件と富山の強姦冤罪(えんざい)事件以来で、異例。両事件と同様、今回の検証結果も公表する方向で検討するという。

 今回のチームは西村泰彦・官房審議官(刑事局担当)をトップに、関係課長らで構成。栃木県警は刑事部長以下で発足させた。警察庁のチームは今後の再審などで指摘される点も踏まえ、捜査の問題点を洗い出す。菅家さんは逮捕後に“自白”した理由を「刑事たちの責めがものすごかった」と釈放後に説明しており、強引な取り調べがなかったかも調べる。(05日 21:0

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20090606/CK2009060602000098.html

 県警の県民広報相談課のまとめによると、五日午後四時までに寄せられた足利事件に対する意見は三百三十四件。内訳は電話が二百六十八件、メールが六十六件で、ほとんどが「県警は何をやっている」「謝れ」などといった批判だったという。

まぁ,マスコミ報道に合わせて批判の声を上げる人間もどうかと思いますが...(マスゴミに踊らされ過ぎですよ,あんたら


これは,いわゆる「和歌山毒物カレー事件」と,状況が酷似しています.
証拠が無いのに死刑判決 - なぜか数学者にはワイン好きが多い
唯一の証拠(状況証拠ではなく)はSPring-8によるものですが,その科学検証が行われたのは1998年,今から10年以上前です.
死刑判決という極刑を出す以上,もう一度,最新科学技術をもって検証しても良いでしょうに,それも無く,被告の死刑が決定です.

なぜ,再度の科学鑑定を行わないのでしょう.
当時の鑑定結果が十二分に信用できるから?いえ,有り得ません.たった一人の教授が代表となって発表した結果を全面的に信じるなんて,全く科学的ではありません.
当時の証拠資料が既に無いから?馬鹿馬鹿しい.証拠の保存もできず,保存もできないほどの微量なものを試料としたなら,そもそも最初の科学鑑定は信頼できません.
再度の鑑定には費用がかかるから?有り得ません.死刑によって失われる人命と調査費用を天秤にかけるなんて...どうせ費用は私たちが払っている税金が財源でしょう?どうぞ使って下さい,と納税者としては言いたいです.


なお,私は入手できておりませんが,「足利事件」については,「冤罪File第3号; 2008年9月号」に「再審請求棄却への大いなる疑問『DNA神話に支配された足利事件」という記事が出ているようです.
http://enzaifile.com/backnumber.html

第3号 2008年9月号 定価380円
御殿場少年事件全検証
「本当に集団強姦未遂はあったのか!?」

再審請求棄却への大いなる疑問
「DNA神話に支配された足利事件

日野町事件取材記
「消えたアリバイ」

処刑された死刑囚の悲劇
「福岡事件」全記録

シリーズ痴漢冤罪
西武池袋線・小林事件」   他