科学的に正しくない『エジソンの母』

11日,珍しく早く仕事が終ったので,「エジソンの母」というテレビ番組を,ふと見ていました.
私はテレビを持っていないので普段はテレビは見ないのですが,先日,「博士,『ガリレオ』という番組,面白かったですけで御覧になってました?」と言われたので,最近は科学啓蒙的な面白いドラマをやっているのかなぁと思って,友人宅で見てみた次第です.

http://www.tbs.co.jp/edison-mama/

「1+1はどうして2なの?」現代の小学校に、あの発明王エジソンの子供時代みたいなヤツがいたら!?

 偉大な発明家、トーマス・エジソンは3ヶ月で小学校を落ちこぼれたという。
「1+1はどうして2になるの? ふたつのコップに入った水を別のコップに入れると、水はひとつのコップに入るよ? 1+1は1かも知れない。ほかにも、落とした一枚のお皿が、100個のかけらになって、それを全部足したら…。1+1+1+…1枚のお皿になるよ。なのにどうして“1+1は2”なの?」
興味を抱いたことや、疑問に思ったことのすべてに「なぜ?」「どうして?」と教師へ質問しつづけたエジソンは、問題児として学校を追い出された。彼は周囲から嘲笑されるが、母・ナンシーだけは息子を見捨てることなく温かく見守り続けた。エジソンが不思議に思うことは何でも2人で話し合い、考える事を学び、楽しみ、息子の想像力を伸ばした。その結果、成長したエジソンは世紀の発明王と呼ばれる人物になる…。
(中略)
 テンポのいい台詞まわしを得意とし、史上最年少で向田邦子賞を受賞した大森美香の脚本でおくる大注目ドラマである。

いやもう,番組開始から,エジソンを謙虚で物静かな努力家の科学者タイプに紹介しているわ,(寝ている間の夢という設定ではあるものの)ノーベル賞授賞式で日本語でスピーチするは,役者の演技は大根だわ,むしろ子役の方が見るべきものがあるくらいの,とても大注目ドラマとは思えなかったのですが...

ただ,「クレタ人のパラドックス」が登場したのは驚きました.
番組の後半で,「プラトンソクラテスパラドックス」という名で,1分もかけてアニメの解説が入っていました.

ところが,感心したとたん.

2進法では1+1はじゅう」(普通,いちぜろ,とか言いません?「じゅう」って,10進法ですやん)
「排他的論理輪では,1+1はゼロ」(これは間違ってませんが,そのセリフを聞いている大学の准教授が,「1+1=0」と書いていました.普通,「1\oplus 1=0」って書きませんかねぇ.)
「法が2の時は,1+1はゼロ」(これも間違ってませんが,准教授,「1+1=0」じゃなくて,せめて「1+1=0 (mod 2)」とか...)

などなど,ダメダメです.
(余談ですが,「だれ?この八百屋に似合わない美人は」って,三十代後半の坂井真紀も美人と言われるのは本望でしょう...)

それに,いくらなんでも教育現場をバカにしています.私の両親・祖父母も教師でしたが,いくらなんでも

「なぜ勉強をする?それがあなた達の仕事だからよ!」「あなたはバカじゃないの?!」「あなたの脳ミソは腐ってるんじゃないの?!

なんてセリフを吐く小学校教師は...中にはいるかもしれませんが,こんなステレオタイプな教師は少数派でしょう.

エジソンが偉大な天才発明家」というのはウソではありませんが,日本で広まっている伝記にはかなりエジソンの実際のイメージとは離れたものです.
発明件数にしても,他人の特許を強引に自分のものにしたこともあったし,物理学に疎かったことは(実際に言ったのか,後世の作り話かは別としても)「私は数学者を雇えるが,数学者は私を雇えない」というエジソンの格言にも現れています.
何より,発電所が作った電気を送信するのに直流と交流のどちらが向いているか,という所謂「直流交流戦争」にて,現在,日本でも家庭に交流100ボルトが来ていることからも分かるとおり,エジソンニコラ・テスラに見事に敗北しています.
(ついでに書くと,エジソンの会社の絡みで,日本には東日本と西日本でアメリカからの機械とドイツからの機械という別なものを購入したため,東京と大阪では周波数が違うというとんでもない弊害が起こっていることも,周知の事実です)

というわけで,期待したものの,無駄な一時間を過ごしてしまいました.