沖縄集団自決は無かった?

まだマトモな記事です.毎日新聞社
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20080113k0000m040104000c.html

 防衛省防衛研究所(東京都目黒区)が、第二次大戦時の沖縄・集団自決に関する資料に「集団自決は戦隊長命令でなかったことが証明されている」とする見解を付けていたことが分かった。資料は図書館で一般公開されており、専門家は「自決命令については事実が確定しておらず、読む者に予断を与える」と強く反発。同研究所は「不適切だった。削除したい」としているが、国の機関が一方的な見解を示していたことは、波紋を広げそうだ。

 見解が付けられていたのは「集団自決の渡嘉敷(とかしき)戦(現地参戦者手記)」と「座間味(ざまみ)住民の集団自決(同)」。資料では、渡嘉敷島では海上挺進(ていしん)隊第3戦隊長だった故赤松嘉次さん、座間味島では同第1戦隊長だった梅沢裕さんが「集団自決を命令した」と書かれている。

 見解はこれを強く否定し「『日本軍側の旧悪を暴く』という風潮の中で事実とは全く異なるものが、あたかも真実であるがごとく書かれたものである」と指摘。さらに「宮城晴海著『母の遺したもの』(高文研2000・12)等から赤松大尉、梅沢大尉の自決に関する命令が出されていないことが証明されている」(原文のまま、正しくは「宮城晴美」)とし、「防衛研究所戦史部」と書かれている。作成日の記載はない。

というのは,複数の一方的な意見に偏っていない専門家の意見を紹介しておりますし

 ▽沖縄戦に詳しい林博史関東学院大教授(戦争論、平和学)の話 戦隊長が自決命令を出したかどうかは、住民の証言が分かれており、事実は確定していない。国の機関が一般公開している資料に一方的な見解を添付するのは異常で、大きな問題だ。政治的意図すら感じる。

 ▽現代史家の秦郁彦さん(日本近現代史)の話 「戦隊長が命令を出していない」という内容は正しいと思うが、一般公開する資料に添付するには表現が強く、防衛研は慎重さに欠ける。また、記述者の名前も書くべきだった。削除されれば問題はないと思う。

記者の署名も入っています.

 同研究所は、安全保障、戦史に関する調査研究などを実施する機関。図書館では開架式で誰でも利用でき、戦史関連資料約15万冊を一般公開している。【三木幸治】

ただ,残念なのは,恐らく故意にではないように思えるのですが,最近のマスコミ報道が,論点をボカしてしまっていることを指摘していない点です.
最初の引用にあるように,ここで報道されているのは,沖縄中の全ての悲惨な自決の話ではなく,2箇所・2名の隊長が自決を強制したかどうかということです.
しかし,最近の報道を見ていると,そのうちこの議論が「沖縄戦では日本軍による日本人への自決強制は一切無かった」という内容の議論になりそうで不安です.

南京大虐殺問題とそっくりです.
虐殺はあった.これはあらゆる独立した資料・記録・証言が虐殺の存在の事実へ収束することから,真実と考えることが普通です.
問題となっているのは,確実な証拠が発見されていない虐殺された人数等についてです.
しかし,「虐殺された人数は極めて少なかった」派の人たちが「虐殺自体が存在しなかった」と主張しているかのように報道されているのが事実です.
(まぁ,実際に「極めて少なかった」派の人は,意図的に「虐殺は無かった」と取られるような話し方をしておりますし,さらに実際に「虐殺は全く無かった」と主張する人がいるのも事実ですが...)

「日本軍による南京大虐殺は無かった」と言う人で,「ナチスによるホロコーストは無かった」とも言う人が居るのも不思議です.彼らは,どの国の歴史も改竄するつもりなのでしょうか(歴史修正論者; リビジョニスト.改竄なのに,「修正論者」という言葉が学術的に定着しつつあるのも,問題ですが...).