笑っちゃうほどトンデモない記事
日経ビジネス誌のWebに載っていた次の記事，
http://dignio.nikkeibp.co.jp/article/as/20110525/220187/
慢性疲労から五月病まで Text by Chisa Nakajima
年度替わりから、早2カ月を経過。今年は東日本大震災の混乱の影響もあり、ゴールデンウィークでリフレッシュしたつもりでも、心身ともにガクンと疲れを感じる頃ではないだろうか。そんなとき、試してほしいのが、各種の注射や点滴療法だ。
自分が肩凝りがヒドかったこともあって何気なく読んでみると，出るは出るは．．．
「にんにく注射も、プラセンタ注射も、効果を早く実感できることと、短時間で済むのが、男性に人気の理由ですね。疲労回復という効果は同じですけど、ちょっと違う目的で、使い分けて打つ患者さんもいます」。ちょっと違う目的で使い分けるとは？？？ 「プラセンタ注射には、微妙に違う効果があるみたいなんです。最初は疲労回復を狙ってプラセンタ注射をしていた患者さんに、疲れも取れるけど“男性機能”が回復するのがうれしくて、とおっしゃる方が多くいますね」
「微妙に違う効果があるみたいなんです」
「みたい」って，なんやーーーー
．．．プラシーボ効果の違いってことですね．
激疲れ、がん家系なら、
高濃度ビタミンC点滴
メガビタミンキター．．．
（メガビタミンは既に一単語として認識されているので，検索する際は「mega vitamin」ではなく「megavitamin」で調べて下さい）
本気で体質改善を目指す
マイヤーズ・カクテル点滴
こちらも，ビタミン，マグネシウム，カルシウム等で病気が治ると称するものです．
英語版Wikipediaに記載があるのですが，正しいかどうかは未検証ですが
However, evidence for its effectiveness is largely anecdotal; there are few clinical studies of the cocktail[1][2] and a placebo-controlled double-blind study of the effectiveness of Myers' cocktail at treating fibromylagia found the cocktail did not perform significantly better than a placebo.[3]
プラセボ効果を考慮した二重盲検法はタダのプラセボ効果を超えるものでは無かったとのこと．
無駄かもしれないけど無害だとのことなのですが．．．
わかばクリニック院長、工藤さやか先生は、健康と美容をトータルに捉えた、総合医療を標榜する。現在はアンチエイジング研究に特化し、高濃度ビタミンC点滴療法など、代替療法も積極的に取り入れている。
まず，わかばクリニックのページで紹介されている医師，
http://www.wakabamc.com/dr_introduction/dr_introduction.html
医師の資格があるのか調べてみます．
http://licenseif.mhlw.go.jp/search/top.jsp
いくら探しても「工藤さやか」の名前は出ません．大学の研究者なのかと思って博士論文が出ているかチェックしても，
国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online
出てきません．
それだけなら，ペンネームなのか（医者が医療関係でペンネーム．．．医者免許の名前と違う説明はどうするのか．まぁ，香山リカ氏の例があるから．．．）とか綴りがちょっと違うのかとか思うのですが，「皆様の美容や健康をサポートする、当クリニックのドクターをご紹介します。」のページの3人の医者の中で，医学博士取得が確認出来たのは一名だけです．
http://www.wakabamc.com/dr_introduction/dr_introduction.html
そう，田地野和宏氏は，「前壁中隔梗塞における心筋梗塞発症早期の異常Q波の消失の臨床的意義」という博士論文が確認できます．
「院長 工藤 さやか」「医師 下島 久美子」というのは，博士とも医師免許取得ともどこにも書かれていません．
（注：その後，田地野氏の他に，工藤氏，下島氏についても，http://licenseif.mhlw.go.jp/search/top.jspにて医師免許保有が確認できました．1次情報と2次情報を混ぜて記載して関係者に御迷惑をかけた旨はお詫び致します．参考：わかばクリニックの疑惑が晴れた - なぜか数学者にはワイン好きが多い）
普通にGoogleで検索すると，「うがメディカルクリニック」．．．あれ？わかばクリニックは？
http://www.ugalc.com/
ああ，なるほど，会社なのか．．．
会社概要｜Fullacera[フラセラ] Dr.わかば株式会社
DR.Wakaba 会社概要
社 名Dr．わかば株式会社（ドクターワカバ）
本 社〒106-0032 東京都港区六本木7-15-10 クローバービル6F
設 立平成18年1月23日
資 本 金1000万円
役 員 代表取締役：工藤さやか
取締役：宇賀正護
唯一，「わかばクリニック」「うがメディカルクリニック」の医師で共通して記載されているのは「サーマクール認定医」．
なんだそりゃ，と思って調べると
http://thermage-japan.com/care/
サーマクールを製造しているアメリカのSolta Medical(ソルタメディカル)社では、サーマクールの原理を正しく理解し、かつ安全に使用してもらうために、医師を対象に独自のトレーニングプログラムを行っています。
サーマクール認定医制度とは、このトレーニングプログラムを修了した医師に認定書を発行するシステムです。
だそうです．
ああ，もう，何からなにまで怪しくてツッコミ切れない（笑）．
ただ，メガビタミン療法やニンニク注射のようなインチキをやっているところはいくらでもあるので良いのですが（いや，よくないですが．．．），医療のように報道している日経ビジネスの責任は重い．
日経BP社のサイトによると，
会社情報 - 日経BP社
わたしたちの目指すこと
日経BP社は、雑誌・書籍、インターネット、展示会・セミナーというそれぞれの分野で、「経営」「技術」「生活」の三分野を広くカバーし、ビジネスパーソンに高付加価値の情報を発信するクロスメディア企業です。
その特徴は3つのキーワードに集約されます。
専門、先端、先見
日経BP社の記者はそれぞれの分野に特化した“専門”性を持っています。専門性を持つことでその分野のトレンドにいち早く気づき、特定分野の専門家だからこそ知り得る情報源にアクセスして“先端”の情報を入手することができるのです。さらには、蓄えた専門＆先端情報を基に未来を予測することで、“先見”を生み出します。そうして、読者の皆さんに時代の変動期を生き抜くための「専門、先端、先見」という確かな情報をお届けできるのです。
インチキ代替医療が確かな情報ですか．．．
