「水からの伝言」から思い出したこと

『水からの伝言』、現在も授業中 | スラド Linux

水からの伝言』という本があります。水に「ありがとう」と声をかけながら冷やすときれいな結晶が、「ばかやろう」と言いながらだと汚い結晶ができるというファンタジックな本です。数年前からこれを元ネタに道徳の授業などが行われ、批判を浴びました。今年2月にも、ニセ科学が学校に入り込む例として毎日新聞の記事になったりしました。ですが 前野[いろもの物理学者]昌弘のページ:日記兼更新記録によるといまだ授業で使われている模様です。

http://wiredvision.jp/news/200706/2007061821.html

西洋医学の医師のなかには、大学病院での職を辞して沙志剛氏の研究所の所長になった者もいる。沙氏には、日本で議論をひきおこした『水からの伝言』の江本勝氏との関係もあるようだ。


トンデモ本大賞が10日後に迫ったため,と学会が陰謀を巡らしてこのような話題を広めている?(笑)
と学会2018年度イベント
(注:「水は語る」は,2001年の第10回トンデモ本大賞でノミネートされるも,惜しくも2位の得票数で大賞成らず.その時の様子は,以下の本に収録されています.
http://www.amazon.co.jp/%E3%81%A8%E5%AD%A6%E4%BC%9A%E5%B9%B4%E9%91%91%E3%80%882002%E3%80%89-%E3%81%A8%E5%AD%A6%E4%BC%9A/dp/4872336372

唐沢:あはははは.しかしあれだよね,「ありがとう」とか「ばかやろう」とかわかりやすいメッセージじゃなくてさ,もっと水を混乱させるようなメッセージを見せた場合のも見てみたいよね,「おめでとう」とか(会場爆笑)

さらに,一連の「水」シリーズは,以下の本にてまとめて紹介されています.
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%A2%E6%9C%AC%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%95%8CT-%E3%81%A8%E5%AD%A6%E4%BC%9A/dp/4872338499

今,超常現象業界で驚くべきモノが大ブームを起こしている.それは「水の結晶」である.氷の結晶というほうが学問的には正しい気がするが,なぜか水の結晶と呼ばれている.

冒頭のこのコメントは,さらに書きますと同内容が菊池さんのブログにも書かれています.
kikulog

さらに話はもどって、そもそも「水の結晶」とは「氷」であるということがどのくらい認識されているのか、気になりはじめました。もしかして、冷凍庫で作られる氷と全然別のものだと思われているのかもしれません。どうなんでしょうね
そう考えると、「水の結晶」という言葉は、マーケティングの面でうまかったと言えるかもしれません。あれが「氷」だったら、これほどヒットしなかったのかも
(中略)
まあ、そんなわけで、「水の結晶」というものを普通の氷とは違う特別なものだと思いこんでいるお友達がいたら、教えてあげてください。
あれはただの氷で、単なる霜です

この辺りについては,以前も書きましたので,以下を参照下さいまし.
「水からの伝言」を信じないでください - なぜか数学者にはワイン好きが多い

大きく話がそれましたが,私が思い出したのは,トンデモ本のことじゃなくて,菊池さんのblog(kikulog)や,天羽さんのページ(http://www.cm.kj.yamagata-u.ac.jp/toss_watch/index.html)あるいはWikipedia日本語版(TOSS - Wikipedia)で触れられている,「教育法則化運動」についてです.

主に明治図書(例えば,「教室ツーウェイ」)の国語教師・向山洋一氏と,太郎次郎社・「ひと」の数学者・遠山啓氏との1980年代のバトルは,国語教師・西郷竹彦氏が向山批判を始めたこともあり,大いに話題になりました.
Wikipedia日本語版には,
TOSS - Wikipedia

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中立的な観点:この記事は、中立的な観点に基づく疑問が提出されているか、あるいは議論中です。そのため、偏った観点によって記事が構成されている可能性があります。詳しくは、この記事のノートを参照してください。

TOSS(トス:Teacher's Organization of Skill Sharing(教育技術法則化運動)の略)とは、向山洋一を代表とする、教師の教育技術についての方法(=指導法)を提唱する集団、及びその活動である。TOSSの組織や公開されている指導マニュアルについては、批判も存在する。(TOSSに対する評価と批判の項目参照)
(中略)
なお、より厳しい批判としては、向山とTOSSが確信的なオカルティズムに基づいているとし、これを愚民教育であるとする意見もある。

と書かれていますが,未検証・中立的な観点に書かれているように,少なくとも20年前から向山氏の書籍を読むと,別に超常現象を信じていた様子ありません.現在は分かりませんが.ただし,当時非常に若かった私も,向山氏の講演を聞いて法則化運動のトリックはすぐに分かりました
要は子供に限らず,人の気を惹く話術なんです.「向山式要約指導」で,「要約とは,『誰がやってもほぼ同じ答えになる』ということでなければならない.(中略)実践の感じから言うと,『20字』以内というのが,最も手ごろである」というのは,長い物語からキーワードを向山氏の指導に従って3つほど取り出して日本語の文章にすると,20字にならざるを得ないということに過ぎません.「『前を向きなさい』という変わりに,『おへそを先生の方に向けて下さい』というだけで」というのも,決して教育の本質ではありません.
(技術だとは思いますが.実際,TOSS=法則化運動の中で紹介されている,算数ゲームなんかは有用なものが多いです.)

要するに,WikipediaなんかでTOSS批判している人たちは,20年以上前のバトルや,それ以前のこと,水道方式とか綴り方運動について知ってて発言しているのかなーというのが思い浮かびました.WikipediaのTOSSの項の参考文献が,一番古いもので1991年だったので.

批判やウォッチしてはる方々は,ご存知ですよね?
向山洋一氏の(教祖的)法則化運動は,ここ5年や10年のものじゃないってことについて.