読みかけ「マインド・コントロールからの救出」

うかつにも知らなかったのですが,かの(良くも悪くも)有名な著書

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%AE%E6%81%90%E6%80%96-%E3%83%8E%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9-%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%83%B3-%E3%83%8F%E3%83%83%E3%82%B5%E3%83%B3/dp/4765230716

の作者,スティーブン・ハッサンの

Amazon CAPTCHA

を見つけて買いました.

まだ1/3ほどしか読んでいないですし,かなり面白いのは確かなのですが,一箇所だけ気になるところがあって,ハッサン氏にメールを書こうと思っているところです.
それは,注(どうやら,「訳注」ではないようです)の2で,

「偽りの記憶症候群」もメンタルヘルスの専門家からは認知されていない.何らかの管理された環境下で,絶対に起きていないトラウマ的な過去の記憶を被験者に植え付けることが可能だと証明した研究はない.一定の条件下で過去についての謝った確信を植えつけられる人がいることが,事例証拠によって示唆されているだけだ.

「一定の条件下で過去について確信を植えつけられる人がいることが,事例証拠によって示唆されているだけだ」とは,明らかにエリザベス・ロフタス博士に始まる一連の研究のことでしょう.
エリザベス・ロフタス - Wikipedia

エリザベス・ロフタス(Elizabeth F. Loftus, 1944年10月16日 - )は、米国カリフォルニア州ロサンゼルス生まれの認知心理学者。抑圧された記憶の概念に対する批判やのちに与えられた情報などによって変容する偽りの記憶(虚偽記憶)の生成について研究している。実験室内に留まらず、幼児期の性的虐待の誤った記憶など、研究の成果を広く司法の場に反映していることでも知られる。記憶と目撃証言に関する研究の第一人者である。

しかし,私には,ハッサン氏自身が述べている,ジンバルド博士の実験自体が,徹底的に「トラウマ的な過去の記憶を被験者に植え付けることが可能なことを証明した」実験だと思います.
スタンフォード監獄実験 - Wikipedia

ジンバルドーは、実際の監獄でカウンセリングをしている牧師に、監獄実験の囚人役を診てもらい、監獄実験と実際の監獄を比較させた。牧師は、監獄へいれられた囚人の初期症状と全く同じで、実験にしては出来すぎていると非難。

看守役は、囚人役にさらに屈辱感を与えるため、素手でトイレ掃除(実際にはトイレットペーパの切れ端だけ)や靴磨きをさせ、ついには禁止されていた暴力が開始された。

ジンバルドーは、それを止めるどころか実験のリアリティに飲まれ実験を続行するが、牧師がこの危険な状況を家族へ連絡、家族達は弁護士を連れて中止を訴え協議のすえ6日間で中止された。しかし看守役は「話が違う」と続行を希望したという。

後のジンバルドーの会見で、自分自身がその状況に飲まれてしまい、危険な状態であると認識できなかったと説明した。ジンバルドーは、実験終了から約10年間、それぞれの被験者をカウンセリングし続け、今は後遺症が残っている者はいない。

現在では倫理的に許されないだろうと言われる伝説の心理学実験です.私は,ロフタス氏の実験も,このスタンフォード監獄実験と状況は変わりないと思います(倫理面では,もちろん違うと思っています.ロフタス氏の実験は,すぐに忘れ去ることも出来る軽いものだと思います.それに対しても批判はずいぶんありますが...)

何より意見が真っ二つに分かれているものに,「ポール・イングラム事件」がありますが,
http://www.amazon.co.jp/%E6%82%AA%E9%AD%94%E3%82%92%E6%80%9D%E3%81%84%E5%87%BA%E3%81%99%E5%A8%98%E3%81%9F%E3%81%A1%E2%80%95%E3%82%88%E3%81%BF%E3%81%8C%E3%81%88%E3%82%8B%E6%80%A7%E7%9A%84%E8%99%90%E5%BE%85%E3%81%AE%E3%80%8C%E8%A8%98%E6%86%B6%E3%80%8D-%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B9-%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88/dp/4760117288
この中でオフシェ氏やロフタス氏が示唆する実験・指摘は,議論はありますが私は最たる証拠だと思います.
父親にレイプされたと訴えた子供は,まさに簡単に(心理学の素人により)「トラウマ的な過去の記憶を被験者に植え付けることが可能なことを証明した」実例だと思っています.


...とは言え,私も若い頃は,ハッサン氏の言うデプログラミング(急速な逆洗脳)を実践していたのですケドね...若気の至りで申し訳ないじゃ済まない話です.だからこそ,ここ10年以上もかけて,こんな問題提起をして罪滅ぼしをしようとしているのですが...