エセ科学,擬似科学,トンデモ科学...

少し前に,Web上で阪大の菊池誠先生のインタビュー記事を見かけました.
ASCII.jp:信じるな疑え! 「ニセ科学」批判の菊池教授に聞く (2/3)

実は以前に,日本物理学会のセッション関係でやはり菊池先生がWebマスコミで取り上げられていたのですが,記事の内容の酷さを嘆いたことがありました.
ただし,その時に,内容の余りの酷さに「ロクにインタビューもしないで記事を書いたのではないか」と憶測を書いてしまい,当のご本人さまに「ちゃんとインタビューをされました」と指摘され,謝罪したことがありました...ちょっと恥ずかしかったです.
微妙に違う,Web上の記事 - なぜか数学者にはワイン好きが多い

Webで発表するのは紙面媒体上で発表するより気楽なのかなぁと思います.なんか,間違ってはいないけど,底が浅かったりずれてたりです.

ただ,その時は言い訳をするよりも自分のミスを認めるのが大事だと思って書かなかったのですが,指摘を受けて最初に感じたことは,「ちゃんとインタビューをして,この程度の記事でしたか!」ということでした.

しかし今回のアスキーの記事は,3ページも豊富に紙面があるせいか,比較的良く書かれているように思いました.
菊池先生の写真がたくさん載っております.久しくお見かけしていない間に,爽やかになってはります.
(昔の長髪で怪しげだった頃が懐かしいのですが...いえ,怪しくも魅力的でしたのです)
例えば,交通渋滞の物理学的研究を行った話題が出ています.これ,私は情報処理学会の「数理モデル化と問題解決研究会」のシンポジウムでお聞き致しました.私自身も自分の発表等の準備でバタバタして詳細までは覚えていないのですが,確か,粉体の理論とセルオートマトンの理論を融合させたようで面白いなぁと思った記憶があります.そうそう,名大の野依記念学術交流館だったような.


記事では,こう書いてあります.これも間違いでは無いはずです.(オリジナルの確認は出来ていませんが...記事にも書いてありませんし)

 「最初にニセ科学について雑誌に書いたのは1996年。このときはオウム真理教とからめて真面目に取り上げたんです。ああいうものがどうしておかしいか、という考え方について。科学の考え方とそうじゃない考え方について説明したんです」(菊池氏)

なぜ恐らく間違いでは無いと思うかというと,1996年といえば,「トンデモ本の逆襲」が発売されています.
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%A2%E6%9C%AC%E3%81%AE%E9%80%86%E8%A5%B2-%E3%81%A8%E5%AD%A6%E4%BC%9A/dp/489691208X
この本に,しっかりとメンバーとして菊池先生の御名前が入っております.啓蒙活動を活発になさり始めたとしても何の不思議もありません.

ただし,私と菊池先生で,若干に意見の相違があるところがあります.

ニセ科学」は、直裁で分かりやすいレッテルだ。「ニセ」という言葉には、よくないものだという価値判断が含まれており、「問題のある言説だ」と単刀直入に示せるからだ。

 「アメリカの懐疑主義者団体Skeptics Societyの会長、マイケル・シャーマーの著書『なぜ人はニセ科学を信じるのか』の翻訳タイトルから取ったんです。疑似科学とか、とりつくろった言い方をしてもしょうがない。以後はニセ科学という言葉がそれなりネットの中で広まったと思います」

私の知る限り,菊池先生は「ニセ科学」と「疑似科学」を使い分けておられます.そして,主に「ニセ科学批判」をしておられます.
「『疑似科学』という言葉はよろしくない」とは言っておられなかったような...(また推測です.調べろと怒られそうですが,菊池先生のブログや菊池先生が参加なさっている掲示板,あとmixiなんかは量が多すぎて,全部調べることは,ちょっと...)

さて,私が言いたいことは,「ニセ科学」と「疑似科学」は,上で「疑似科学とか,とりつくろった言い方をしてもしょうがない」という風に相反する概念ではなく,マイケル・シャーマーの著書よりも前にマーティン・ガードナーの著書で書かれているように,科学の白黒はウソから真まで連続的であり,多数の概念が途中にあるので,二つの単語は共存すべきものだということです.
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ニセ科学は,確かに「水商売ウォッチング」に取り上げられているものとか,と学会の一連の書に取り上げられているものとかがそうだと思います.一方で,疑似科学は...精神医学や心理学の一部,いや,これは私は菊池先生・香山先生の「信じぬ者は救われる」をまだ読んでいないので,触れないでおきましょう.
Physical Review Dなんかの膨大な仮説の山は,数学者に言わせれば疑似科学でしょう.前提条件が多すぎて現実的とは思われません.それらしい数式で証明は書いてありますが.
私は情報科学の一部も疑似科学だと思っています.物理学や数学では常識の,追試や検証と言った論文がほとんどありません.(ひょっとしたら,追試や検証が必要な,あやふやな論理の論文は落とされているだけかもしれませんが...私も査読で苦労した経験が...)

やっぱりニセと擬似は違うと思うのですが...

ウソ--ニセ--擬似--仮説--真

みたいな,ガードナーの言う「連続体」が存在すると思います.
ガードナーは,ウソと真の中間の例として,完全な証明はされていない宇宙膨張理論なんかを取り上げています.それと比較すると,上記の連続体は,ちょっと似非科学に好意的なのかもしれません.恐らく,私が似非科学も大好きだからなのでしょう.


なお,最近,テルミンの話題も良く見かけますね.
某雑誌の付録(というか付録がメインなのですが)とか,マトリョーシカ型のテルミンが通販で売られてたりとか.
菊池先生はお喜びかと.