マイクロソフト社は歴史修正主義者の肩を持つ

マイクロソフトが,毎日新聞社との提携を止めて産経新聞社と共同サイトを立ち上げることになったのは大いに話題になりました.
「MSN産経」が10月スタート 毎日新聞は独自サイトに - ITmedia NEWS

2007年06月27日 20時22分 更新

 マイクロソフト産経新聞グループは6月27日、産経新聞のWeb版をMSNに統合したニュースサイト「MSN産経ニュース」を10月1日に開設すると発表した。現在MSNと毎日新聞社が共同運営している「MSN毎日インタラクティブ」は9月30日で終了し、毎日新聞は独自にニュースサイトを始める。
(中略)
 産経新聞社の名雪雅夫常務は「ネットを報道機関にとって最も重要な媒体のひとつとして位置づけ、社の体制の大胆な改革を図る。ナンバー1のニュースサイトを目指す」としている。

よりによって,何で産経新聞なのでしょう?と思っていたのですが,案の定.こんな記事がMSNのロゴの元に配信されておりました.
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/071208/acd0712080018000-n1.htm

2007.12.8 00:18

 南京攻略戦の関連書籍の出版が相次いでいる。東京日日新聞の“百人斬り”記事によって銃殺刑に処された野田毅少尉が生前につづった『野田日記』が近く刊行されるほか、日中関係史、戦史、死傷者数の検証など多様な観点からの出版ラッシュだ。南京陥落(1937年12月13日)から間もなく70年。「大虐殺」説に基づく米映画が話題になるなど虚構が“事実”として広まるなか、きちんと史実を再検証しようという機運が高まっている。(桑原聡、牛田久美)

高まってねぇって(笑).
既に国内の裁判でも元従軍慰安婦とされた人たちの裁判もある程度進み,この記事にも以下のように名前が出ている

“ニセ写真”の実証で知られる東中野修道氏は、一次資料で行軍を再現した『再現南京戦』(草思社)を刊行した。

日本を代表する歴史修正主義者の一人,東中野修道氏は,元従軍慰安婦の方への名誉毀損ということで敗訴しており,一定の決着が付いています.そりゃ,記事にもあるように,70年もたっていますから.

日本で「南京大虐殺は無かった」と主張する人たちの意見は,驚くほどに(少なくとも私は,果たして偶然なのかどうか驚きました)「ナチスホロコーストは無かった」と主張する人たちの意見に類似しています.

ナチスによるユダヤ人の虐殺が無かったという人たちの観察と分析については,やはりマイケル・シャーマーの「なぜ人はニセ科学を信じるのかII:第4部 歴史と偽史」(ハヤカワ文庫版 pp.105--273)に詳しいです.
http://www.amazon.co.jp/%E3%81%AA%E3%81%9C%E4%BA%BA%E3%81%AF%E3%83%8B%E3%82%BB%E7%A7%91%E5%AD%A6%E3%82%92%E4%BF%A1%E3%81%98%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B%E3%80%882%E3%80%89%E6%AD%AA%E6%9B%B2%E3%82%92%E3%81%9F%E3%81%8F%E3%82%89%E3%82%80%E4%BA%BA%E3%80%85-%E3%83%8F%E3%83%A4%E3%82%AB%E3%83%AF%E6%96%87%E5%BA%ABNF-%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AB-%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%BC/dp/4150502811
なんとこの本には,日本人が登場します.東中野修道氏と共に日本では有名な,mixiでも大活躍の西岡昌紀氏です.西岡氏は,いわゆる「文藝春秋社『マルコポーロ』廃刊事件」の張本人で,今から13年ほど前に発売されたマルコポーロ誌1995年2月号にて,「ホロコーストは無かった」という記事を執筆し,発売後の約3日以内という俊足でイスラエル政府はもとより日本政府よりも遺憾の意の表明を受け(当然,イスラエルからは遺憾どころか強硬な圧力もあった),雑誌マルコポーロが丸々消え去ることになったという事件を起こした人物です.

確かに,あっさりと圧力に屈した文藝春秋社は情けなかったですが,虐殺は無かったと唱える東中野氏,西岡氏,そして産経新聞社はもっと情けないです.

これなら,まだ毎日新聞社と組んでた方が良かったのでは?とマイクロソフト社が心配になる,今日この頃です.

ちなみに,西岡氏,mixi掲示板上にて,「一つでいいから,ナチスユダヤ人大虐殺があった証拠を,南京大虐殺があった証拠を教えて下さい.」とお願いしてまわっています.
これは,やはり既にマイケル・シャーマーの著書に,以下のように「ナチスホロコーストは無かった」さんの言葉として現れています.上記のハヤカワ文庫版p. 158から引用いたします.

IHRの会議後,フォーリソンはガス室に関する非公式な討論を行うため,わたしをホテルの部屋へ招いた.彼は半時間のあいだずっと,目を逸らしもせず,指をふりながら,ナチのガス室が大量殺人に使われたというなら,「ひとつでいい,たったひとつでも証拠を見せて欲しい」と要求しつづけて,わたしを悩ませた.こちらは同じ質問をただくりかえしただけだった.「どういったものを証拠だと考えているのですか?」と.しかし,フォーリソンは答えようとはしなかった(それともできなかったのか?).