日本版「歪曲をたくらむ人々」

南京の真実
誰もが思想・表現の自由を持つことは当然の権利だと思っているので,誰が何を主張しようが構わないと思っています.
ただ,明らかに事実ではないウソを「真実」と主張されると,科学者としては反論せざるを得ません.
その点,映画「南京の真実(仮題)」のサイトでは,そこからのリンクをたどっても詳しい情報は特になく,正面から反論するような内容は書いてありません.ただ,こう書いてあるだけです.

南京陥落70周年の今年 (平成19年・2007年)、米国サンダンス映画祭にて、南京「大虐殺」映画が公開されました。 さらに、中国、カナダ、米国等で計7本の南京「大虐殺」映画製作が予定され、全世界で公開されると言われています。歴史的事実に反し、誤った歴史認識に基づくこのような反日プロパガンダ映画によって、南京「大虐殺」なる歴史の捏造が「真実」として、世界の共通認識とされる恐れがあります。また、そこから生まれる反日、侮日意識が、同盟国の米国だけでなく、世界中の人々に定着しかねません。

内容が分からない以上,推薦も批判もできません.しかし,この下りを読むと,ある程度の内容の推測ができます.

会場には、製作・監督を担当する水島総をはじめ、南京問題の研究者である東中野修道亜細亜大教授や保守論壇を代表する渡部昇一氏など三十三名の賛同者が勢ぞろい。国会議員も超党派松原仁稲田朋美議員等12名が「南京の真実を考える国会議員の会」として参加し、国会議員とほぼ同数の地方議員も加わる大規模な記者会見となりました。

科学者が推測だけでものを言うことは許されないので,主観的な感想を,他人の引用から示したいと思います.
私が連想したのは,ある哲学者の以下の言葉です.

「このような書物が出版されねばならない,ということは悲しむべきである.同時に,このような書物が出版されえたということ,それを禁止する法律がないということは,ともに喜ぶべきである.」

発言者は,ヤン・ウェンリーという人です.


同時に,歴史再考協会のことが連想されました.
ホロコーストは無かった」と主張する人たちのことを書くには,日記のスペースとしては狭すぎます.例えば,以下の文献をご参照下さい.
http://www.amazon.co.jp/%E3%81%AA%E3%81%9C%E4%BA%BA%E3%81%AF%E3%83%8B%E3%82%BB%E7%A7%91%E5%AD%A6%E3%82%92%E4%BF%A1%E3%81%98%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B%E3%80%882%E3%80%89%E6%AD%AA%E6%9B%B2%E3%82%92%E3%81%9F%E3%81%8F%E3%82%89%E3%82%80%E4%BA%BA%E3%80%85-%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AB-%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%BC/dp/4150502811
ナチスホロコーストは無かったと主張する人たちと,日本軍の南京大虐殺は無かったと主張する人たちの,驚くべき共通点が分かると思います.「なぜ人はニセ科学を信じるのか」の著者のマイケル・シャーマー博士によると,ホロコースト否定論者の人たちと会ってみたところ,

一般的に見て,わたしはこの否定論者が比較的気持ちのいい人物であることに気付いた.彼らは自分たちの活動とそのメンバーについて快く,そしてたいへん素直に話してくれたし,出版されている論文から大量の資料を気前よく,いくらでも提供してくれた.

そうです.マイケル・シャーマー博士によると,これは皮肉ではなく,事実,否定論者によって明らかにされた歴史的事実も多くあるそうです.もちろん,だからと言って否定論者の主張全体が正しいわけではなく,「証拠の収束」によってホロコーストが合ったことが科学的に証明されることが著書の中で述べられています.


文庫版の「なぜ人はニセ科学を信じるのか」の中で,「ナチスホロコーストは無かった」について,145ページに渡って論じられています.私がここで145ページ分の文章を書くまでもなく,「ナチスホロコースト」と「大日本帝国軍の南京大虐殺」を置き換えると,議論はそのまま成り立ちます.なのでここでは書きませんので,御関心のある方は,ぜひ700円+消費税のシャーマー博士の本をお買い求め下さいまし.


なお,この映画については以下のサイトのページで知りました.
http://news.ameba.jp/2007/01/3088.php