草思社倒産

「日本は不況真っ只中か,不況から抜け出しつつあるのか」と言われますが,個人的にはこのニュースで,最悪な不況であることが衝撃的に実感されました.

http://mainichi.jp/select/today/news/20080110k0000m040071000c.html

 「声に出して読みたい日本語」(斎藤孝著)シリーズなどで知られる中堅出版社の「草思社」(木谷東男=はるお=社長、東京都文京区)が9日、東京地裁民事再生法の適用を申請、事実上倒産した。負債総額は22億4789万円。数々のベストセラーを出したものの、ここ数年は業績が悪化し、自力での再建を断念した。すでに出版社数社が支援を表明しており、営業は継続するという。出版界では自費出版大手の新風舎が7日に破綻(はたん)したばかり。

 草思社は68年創業で、社員33人。徳大寺有恒さんの「間違いだらけのクルマ選び」、川島令三さんの「全国鉄道事情大研究」などのシリーズが人気を呼んだ。印象的なタイトルの付け方に定評があり、「平気でうそをつく人たち」(モーガン・スコット・ペック著)、「他人をほめる人、けなす人」(フランチェスコ・アルベローニ著)などの翻訳書も含め、次々にヒットを飛ばした。中野孝次著「清貧の思想」は流行語にもなった。

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2008010900803

 同社は1961年創業。自動車評論家、徳大寺有恒氏の「間違いだらけのクルマ選び」(76〜2006年)のほか、「大国の興亡」(ポール・ケネディ著)、「声に出して読みたい日本語」(齋藤孝著)、「全国鉄道事情大研究」シリーズ(川島令三著)などのベストセラーを出版した。

草思社が民事再生申し立て - ITmedia NEWS

 1961年に創業。「全国鉄道事情大研究」シリーズや、ベストセラーになった「決定版大国の興亡」、「平気でうそをつく人たち」などノンフィクション系に強く、「カッコウはコンピュータに卵を産む」「インターネットはからっぽの洞窟」(ともにクリフォード・ストール)といったIT関連を扱った書籍も発行していた。

この草思社,2001年発行の本で,こう評されています.

草思社---翻訳書で快進撃!
(本文略)
いずれにせよ,近年目を離せない出版社ではある.

こう評した本は,こちらです.
http://www.amazon.co.jp/%E7%88%86%E7%AC%91%E3%83%BB%E4%BE%BF%E4%B9%97%E6%9C%AC%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF-%E5%B9%B3%E6%88%90%E4%BE%BF%E4%B9%97%E6%9C%AC%E7%A0%94%E7%A9%B6%E4%BC%9A/dp/4803503125

爆笑・便乗本ガイドブック (単行本) 平成便乗本研究会 (編集) 出版社: 竹内書店新社

内容(「MARC」データベースより)
平成期のベストセラーから、「「NO」と言える日本」「磯野家の謎」「大往生」「「超」勉強法」「脳内革命」「「複雑系」とは何か」など9点余を選び、その便乗本について紹介したガイドブック。

この「便乗本ガイドブック」のコラムでは,草思社の本が9冊,タイトルが出されています.

  • 間違いだらけのクルマ選び徳大寺有恒
  • 英国貴族になった私,ひ弱な男とフワフワした女の国日本,とんでもない母親と情けない男の国日本,ふにゃふにゃになった日本人--しつけを忘れた父親と甘やかすだけの母親:マークス寿子著
  • 他人をほめる人,けなす人:フランチェスコ・アルベローニ著
  • 平気でうそをつく人たち--虚偽と邪悪の心理学:M・スコット・ペック著
  • 庭仕事の楽しみ:ヘルマン・ヘッセ
  • 猫たちの隠された生活:シャル・トーマス著

ただ,どうせスコット・ペックの「平気でうそをつく人たち」を出すなら,私なら,あと一冊加えて10冊の紹介にしたと思います.

  • うそつき--うそと自己欺まんの心理学:チャールズ・V・フォード著

この「うそつき」は,「平気でうそをつく人たち」と同様,森英明氏の翻訳です.
近年,ボーダーライン(境界性人格障害)について,医原病じゃないかとの批判が急激に高まっていますが,その前に,ボーダーライン症候群の引き金になった書籍のうちの2冊が,この2冊じゃないかと思っています.
臨床心理学者なら,少なくともどちらかくらいは,本屋で見かけた記憶があるのでは?


そんな草思社の経営状況がこんな風だったとは,なんとも言いようがありません.
似た様な社会派の出版社で潰れた会社で,「社会草思社」という出版社がありました.
こちらについては,どれだけ凄い本を出していたか,というリストを作って下さってる方がおられました.
http://homepage1.nifty.com/ta/sf0/shakai.htm

1947年から2003年まで。このリストにはないけれど、『菊と刀』とか、A・ヘイリーの『ルーツ』などが有名だった。ミステリやSFでは、ちょっと毛色の違う作品が多い。
それとゲームブックがあたった事があった。当時、わたしも少しは読んだが、全然、興味はわかなかった。

学術的文化発展の一端を担う出版社が潰れる国は,衰退することに歯止めはかけられません.
哀しいことです.