人食い人種は都市伝説か?

ここ一週間ほど考えていることがあります.
前にここの日記で紹介したプリオン,つまりBSEに関する書籍で,ノーベル賞受賞科学者ガイジュセック博士がオーストラリアのフォレ族がクールーのプリオンを持つ人間を食することでクールーが広まると書いてありました.これは日本で訳されているBSEに関する一般向けの書籍のほとんどに書かれています.

一方,CSICOP(サイコップ)の創設者の一人であるマーチン・ガードナーが,著書「インチキ科学の解読法」(「Did Adam and Eve Have Navels?」,Martin Gardner,太田次郎訳,光文社)で,「第13章-人食い人種---目撃者がひとりもいない不思議」ということで伝説ではないかと疑問を呈しています.一次情報には当たっていないのですが,その著書によると「アリゾナ州立大学のライル・素テッドマンが,ニューギニアで二年間にわたって調査した結果によれば,食人についての証拠となるようなものは,いっさい発見されなかった。」そうです.確かに,クールーが「直接脳や肉を食わないとうつらない」というわけではないので,食人が必ずあったとは証拠が無い限り言い切れません.しかし注射などをしないとすると,直接食するとうつる可能性が高いというガイジュセックの主張も正しく感じます.

さらに,「図説 食人全書」(「Cannnibales」,Martin Monestier,大塚宏子訳,原書房)という本があります.これには写真付きで人食い人種のことが書かれているのですが,どうも日本語訳には参考文献が一つもない.どれも「○○で著名な××博士によると,△△族の人食いの習慣は...」という文体で,架空の人物や書籍,証拠をでっちあげる五島勉先生の文体にそっくりに見えてしまって,というかごめんなさい,まだ半分しか読んでないのですが(413ページもあって...),学術的な信頼性がどうなのか,今のところ判断が付きません.

もちろん,反社会性人格障害などとされた人たちの犯罪とは別の意味で,部族として慣習的に行われている人食いのことです.
なんとか,「図説 食人全書」の訳者に聞いて,それでも分からなければ,多分まだ御存命のガイジュセック博士にメールか手紙が電話で裏を取ってみたいと思います.さすがに,キャプテン・クックに連絡を取るのは無理ですから.

一番ラクなのは,「図説 食人全書」の原書に参考文献があって,論文などで確認ができることです.
どうなんだろうなぁ...