「実世界イメージング」特集号

日本ヴァーチャルリアリティ学会論文誌のVol. 17,No. 3,2012に,SLAMについての論文が,少なくとも2本あったのですが,

廣瀬,齋藤,線分記述子(LEHF)を用いた実時間SLAM,Trans. VRSJ,Vol. 17,No. 3,pp. 201--208,2012.[1]
渡辺,畑中,小室,石川,単一のウェアラブルカメラを用いた人間の歩行動作推定,Trans. VRSJ,Vol. 17,No. 3,pp. 219--229,2012.[2]

Wkikipedia日本語版にはまだほとんど情報が無いようです.
SLAM - Wikipedia

Wikipedia英語版には,記事っぽいものがあります.
Simultaneous localization and mapping - Wikipedia


ところで,自己位置推定は粒子フィルタで一発ではないかと思うのですが,[1]ではかなり恣意的なマッチングを行なっているように思えます.角度をそのままパラメータとして使っていたり,粒子フィルタを用いた過去研究については「EadeらはRao-BackwellizedパーティクルフィルターとFastSLAMアルゴリズム[17]を用いてSLAMを行った[10]」とさっくりと流しているのにエピポーラ線の図を入れていたり(ほとんど常識ということで省略したなら,ビジョンでエピポーラ線についての図を今更入れる必要はなかろう...),結果に数値的なものが無く,画像とグラフのみだったり,信頼性がちょっと疑問です.[2]では拡張カルマンフィルタを用いているのですが,最初に出る式で状態モデルのパラメータを提示しているのですが,その更新に拡張カルマンフィルタを用いると出るのは最初の式から2節あとの節です.また,計算量の見積も正しいかどうか疑問です.拡張カルマンフィルタにしても粒子フィルタにしても,並列性が高いことはちょっと考えたら分かることで,一概に特徴点数の2.4乗のオーダとか,「最新のCPUを駆使することで,十分に実時間で実行可能な量であると考えられる」とか,議論がアバウトで,このあたり,VR学会も工学系なんだなぁという印象を受けます.「最新のCPU」って何を使ったのかと思って論文を読んでいると,なんと書いていません.まぁ,私も計算環境を論文に書き忘れて,「電卓を使ったのか,スパコンでも使ったのか」と教授に突っ込まれたものです.
どちらもアイディアは面白いものなので,査読者なりラストオーサーのチェックが甘いようです.