女性科学者が10万人超え

http://www.asahi.com/science/update/0414/TKY200704130402.html

総務省は13日、06年の科学技術研究調査で大学や企業の女性研究者が10万2900人おり、53年の調査開始以来初めて10万人を超えたと発表した。研究者全体に占める女性の割合は前年と同じ11.9%だった。

昔から,ほとんど割合は変わっていないんですね.
私が大学の頃も,理系の女性はだいたい1割でした.

一次情報源はこちらのようです.
http://www.stat.go.jp/data/kagaku/2006/index.htm
最初にニュースを見たときは,「何をもって研究者と定義しているのだろうか.政府が勝手に定義して(科研費番号とか),勝手に好きな統計結果を作っているのではないだろうか.」と思ったのですが,邪推だったようです.上記の総務省のページによると,調査は企業・大学等にアンケート票を渡し,どんな研究者がどれくらいいるかは「自己申告制」なようです.

興味のあるところをピックアップしてみます.

大学等の研究者総数女性の人数(割合)
物理・数学 11,157708(6.3%)
電気・通信 15,195879(5.8%)
医学・歯学 76,97916,649(21.6%)
農林・獣医・畜産 9,8191,491(15.2%)
女性の人数も割合も多いのは医学・歯学ですが,注目すべきことは,これが「研究者」の数であることです.もし偏見に満ちた方がいらっしゃったら,「多いのは,医者の助手的な仕事をしている女性が多いからではないか」と思われるかもしれませんが,研究者の定義はこうなっています.

大学(短期大学を除く。)の課程を修了した者(又はこれと同等以上の専門的知識を有する者)で,特定の研究テーマをもって研究を行っている者をいう。

助手ではなく,独立して研究している人のことだそうです.少なくとも建前上は.


さて,大学じゃなくて,企業がどうかも調査されていますので,ピックアップしてみます.

大学等の研究者総数女性の人数(割合)
物理・数学 20,5831,500(7.3%)
電気・通信 179,9277,673(4.3%)
医学・歯学 1,032205(19.9%)
農林・獣医・畜産 5,825968(16.6%)

近年は行政法人化して大学も効率化・利益化が求められていますが,やはり企業の方が利益に関してはシビアです.それを反映して,割合はどれも似た感じですが,人数の桁が違いますね.商品開発に直結する物理・電気は桁違いに人数が多くて,逆に医学・農林は人数が少ないです.
特に,19.9%を誇る企業の医学系女性科学者,人数は205人って...まあ,男女合計でも約千人という少なさですが.


どのみち,女性科学者の割合は少ないですね.科学者陣もそれを意識していて,科研費のCREST・さきがけの募集要項に,猿橋賞受賞者であり元日本物理学会会長の米沢先生のメッセージが入っています.(数学と諸分野の協働によるブレークスルーの探索 - なぜか数学者にはワイン好きが多いのリンク先より)

研究においても女性は半分居て当たり前

人類の半分は女性だから、どの分野にも女性が半分居て当たり前、研究者でも女性が半分居て当たり前です。しかし、日本では、諸分野における女性の参画率が外国と比べ著しく低い。研究者についていうと、総研究者数に占める女性の割合は、理系文系を問わず、OECD経済協力開発機構)参加の三十カ国中、最下位です。
私は、科学技術分野に、参加し活躍する女性研究者が増えていくよう、JST にも積極的に取り組んでいって欲しいと切に願っています。戦略的創造研究推進事業での新しい研究課題の採択においても、女性が参加する研究課題を積極的に採択していくよう要望しています。
科学には直観力が大きな力になります。直観力に関しては女性の方が優れています。女が科学に弱いというのは偏見です。未知の世界を研究することほど楽しいことはありません。
女性研究者の皆さん、この機会に応募して、自らの研究アイディアを発展させる機会を持っていただけたらと思っています。

男女共同参画アドバイザリーコミッティー
委員長 米沢 富美子(JST 男女共同参画主監)(慶應義塾大学名誉教授)

「〜の方が優れています」という言い方は気になりますが....「女は科学に弱いというのは偏見です」というのは,全面的に賛成です.研究する力があるかどうかは個人によるもので,性別によるものでは絶対にありません.