アメリカの医学都市伝説

サイエンティフィック・アメリカンに,こんな楽しい記事がありました.
Debunking Medical Myths - Scientific American
「The British Medical Journal」なのになぜ「アメリカの医学都市伝説」としたかというと,論文の著者がアメリカの大学の研究者だからです.なぜそれが分かるかというと,ありがたいことにフリーで元の論文を読むことができるからです.
Medical myths | The BMJ
著者は,アメリカ合衆国インディアナ州の大学の二人です.

サイエンティフィック・アメリカンで取り上げられた「三大都市伝説」も面白いですね.最初の一つはあきらかにアメリカ特有のもので,残りの二つは日本人でもどこかで聞いたことがあるようなものです.

Eating turkey makes you sleepy. We only use ten percent of our brains. Hair and fingernails continue to grow after we die. These are just three of the medical myths busted in the December 22nd issue of the British Medical Journal.
(適当な訳)
七面鳥を食べると眠くなりやすい.人間は脳の10%しか使っていない.髪の毛や爪は,死後も.伸びるこれらは既に暴かれている三大都市伝説である.これらは12月22日発行の英国医学論文誌に掲載されたものである.

七面鳥については,「単に復活祭の時に沢山の肉や酒を食って,同時に七面鳥の肉を食べることから,疲れて眠くなるということから出てきたのだろう」という解説.人の脳については,これは完全にウソ伝説であることが最近の人は知っていると思うのですが,「最新の脳科学や脳内撮像技術によると,脳の大部分が常に使われていることが分かっている」という丁寧な説明が.髪や爪についても,死体にあまり馴染みのない最近の人にはピンと来ないかもしれませんが,「死んで皮膚が収縮することによって髪や爪が出てきたように見える目の錯覚」と,これまた丁寧に説明されております.


元の論文には,7つの都市伝説が取り上げられていました.

We selected seven for critical review:

* People should drink at least eight glasses of water a day
* We use only 10% of our brains
* Hair and fingernails continue to grow after death
* Shaving hair causes it to grow back faster, darker, or coarser
* Reading in dim light ruins your eyesight
* Eating turkey makes people especially drowsy
* Mobile phones create considerable electromagnetic interference in hospitals.
(適当な訳)
我々は,重要と思われる7つの都市伝説について解説する:

* 人間は,一日に少なくともコップ8杯分の水分を摂取しなければならない
* 人間は脳の10%しか使っていない
* 髪の毛や爪は死後も伸びる
* 毛を剃ると,返って早く黒く太くなってしまう
* 暗いところで本を読むと目が悪くなる
* 七面鳥を食べると眠くなり易くなる
* 携帯電話は健康にとって害となる電磁波を発する

このうち,「暗いところで本を読むと...」だけオヤ?と思ったのですが,解説は至極簡単,「そりゃ長い間,ロウソクやランタンのような薄暗い明かりの下で本を読んでいたら,目も悪くなるかもしれません.でも,現代では,そんな長期間,何十年にもわたってロウソクしか使えないなんてことはないです.要は,暗いところで本を読むと一時的に目がショボショボして機能が衰える可能性はありますが,生涯に渡るような影響を目に与えることはありません.」とのことです.