民俗学における逆さま言葉

文庫版になった(何年も前ですが)「学校の怪談」の一巻を買って読んでみました.
http://www.amazon.co.jp/%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E3%81%AE%E6%80%AA%E8%AB%87%E2%80%95%E5%8F%A3%E6%89%BF%E6%96%87%E8%8A%B8%E3%81%AE%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%80%881%E3%80%89-%E5%B8%B8%E5%85%89-%E5%BE%B9/dp/4043649010/ref=sr_1_8/503-7043265-5620769?ie=UTF8&s=books&qid=1180539087&sr=1-8
その中に,「逆さま言葉」というのが紹介されていました.直接引用されているのは4つで,現代の子供の中に伝承されているとされているのは次の二つでした.

とーんと昔のつい最近
今日は朝から夜だった
八十五六の孫つれて
とことことことこ這ってきた
どんどんどんどん登っていき
海から崖に落っこちた
見てない人が発見し
急いでのろのろ電話した
一人警官ぞろぞろと
曲がった道をまっすぐに
急いでのろのろ這ってきた

どんより曇った日本晴れ
今日は夜から朝だった
生まれたばかりの婆さんが
八十五六の孫つれて
とことことことこ走ってた
海から崖へおっこって
見てない人が発見し
急いでのろのろ電話した
一人警官ぞろぞろと
曲がった道をまっすぐに
前へ前へとバックした

これ,深夜ラジオが全盛の頃に誰かが創作したのだと推測していたのですが,かなり昔からあるそうです.ちなみに私が子供の頃に聞いたバージョンは,次のようなものです.

月の出ない月夜の晩に
昨日産まれた男のお婆さんが
八十五六の孫つれて
水なし川におっこった
それをめくらが発見し
みみつんぼーに,電話した
みみつんぼーは天下一品のおまわりさんに電話した
天下一品のおまわりさんは
一つの二丁拳銃を腰にさし
黒い白馬にまたがって
前へ前へとバックした
それを見ていた男の御婆さんは
腰を抜かして走っていった

さて,私が聞いたバージョンは,現代では差別語とされている言葉が混じっています(メクラやツンボ等).
これは,常光氏の著作でも以下のように言及されております.

(以下のてんぽ物語資料には差別的な用語が散見されるが,庶民生活史の歴史的資料としてそのまま記したことを断っておきたい)

そうりゃ,物語り語り候.天保元年,閏七月,(以下略)

堂光氏自身が子供の頃に聞いたバージョンでは,「ただ,私の記憶では,川から橋へ転落した老婆を助けたあとに,『山にはえてる珊瑚しょと,海にはえてる椎茸を,水で炙って火で練って,明日つけたら今日治る』という文句が続いていた.」そうです.

とにかく,どのバージョンもナンセンスなセンテンスの羅列で,テンポが良く,ある程度の物語的類似性があるのが面白いですね.
付け加えますと,私が聞いたのは,記憶が正しければ北海道は真狩村というところです.違ったとしても,道南(北海道の札幌近辺)であることは間違いありません.
都市伝説,全国を駆け巡る,という感じです.