信頼できる数値解析法の開発.しかも速くしたい.それは幾何的数値解

tullio2005-05-11

幾何的数値解析法というものがあります.
数値解析と言うからにはパソコンを使う学問分野で,微分方程式の数値解法のことを普通は指します.「普通は」って何かというと,確かに現在は数値積分法しかないんですが,幾何的の考え方自体は離散的な数値解析学のどの分野にでも応用できると思います.

今日書きたい幾何的数値解析法は,ハミルトン系の数値解法の,シンプレクティック数値積分法と多様体法です.

シンプレクティック数値積分法は,何よりも数値解の正確さよりも,ある時点t=t_nの変数値から次のステップt=t_{n+1}の変数値を計算した時に,数学的に厳密にシンプレクティック性が保存されているという数値スキーム.計算した数値解自体の解析解との数値誤差により,何次のオーダと分類されます.
この手法の考え方は,

  1. シンプレクティック性は,多分大事だよ.誤差が入って変化するとまずいよ.
  2. シンプレクティック数値積分法は,シンプレクティック性はちゃんと保存されるよ.だから,そこから計算した数値解も,厳密解に近いだろう.

ってとこです.(ほんまか(笑))

多様体法は,もっと分かりやすいです.ハミルトニアンという関数の値は,多くの系では保存量となります.エネルギー保存の法則,みたいな,保存されないと絶対おかしい,というような.それを信じて,多様体法は,時間ステップが進むたびに局所的にハミルトニアンの数値誤差が減るようにいろいろな値を調整します.この手法の考え方は,

  1. ハミルトニアンの値が保存されていれば,そこから導かれるあらゆる値は,きっと正確に近いよ.

です.(ほんまか...)

僕自身は,シンプレクティック数値積分の法をやってます.多様体法は,分かりやすすぎて,ほんまにうまくいくんかーっていうか,怪しげなシンプレクティックの方がかっこいい(笑)まじめに言うと,シンプレクティック性の方がハミルトニアンそのものの保存性より本質じゃないかと信じているからです.

もっとも,一時期大ブームだったシンプレクティック数値積分法も,最近は勢いが弱いです.シンプレクティック幾何学は地道に進んでいるように思いますが,シンプレクティック数値積分法は,乱立する信頼性の高い数値解法の嵐に巻き込まれて沈みそうです.研究が盛んなことは,数値解析屋としては嬉しいんですけどね.

そこで,私が次の応用数理学会あたりで発表しようと思っているのは,シンプレクティックな解法と精度保証付数値計算法あたりの関係をきっちり調べてみようと思っています.なぜなら,信頼性の高い数値解法同士が,互いに相手をよく調べないで争っているのが現状だからです.全部調べるのはとても大変だし,パソコンに実装するのも大変だというのは事実なんですけどね.まずは私がいくつかを評価してみようと思います.

乞う御期待あれ.
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