日本心理学会第75回大会参加:ロフタス教授講演報告(2)
続きです.
日本心理学会第75回大会参加:ロフタス教授講演報告(1) - なぜか数学者にはワイン好きが多い
こちらは写真がボケてしまっていて申し訳ない.
論文はPDFで公表されているので,
https://webfiles.uci.edu/eloftus/BraunPsychMarket02.pdf
アブストラクトだけ訳しておきます.
Marketers use autobiographical advertising as a means to create
nostalgia for their products. This research explores whether such
referencing can cause people to believe that they had experiences as
children that are mentioned in the ads. In Experiment 1,
participants viewed an ad for Disney that suggested that they shook
hands with Mickey Mouse as a child. Relative to controls, the ad
increased their confidence that they personally had shaken hands
with Mickey as a child at a Disney resort. The increased confidence
could be due to a revival of a true memory or the creation of a new,
false one. In Experiment 2, participants viewed an ad for Disney that
suggested that they shook hands with an impossible character (e.g.,
Bugs Bunny). Again, relative to controls, the ad increased confidence
that they personally had shaken hands with the impossible
character as a child at a Disney resort. The increased confidence is
consistent with the notion that autobiographical referencing can
lead to the creation of false or distorted memory.(適当な訳)
しばしば,宣伝のために昔のノスタルジックな記憶を呼び起こすような広告が使用されています.
本研究は,広告の内容が人々が子供の頃に経験したと信じさせることができるのかどうかを調べます.
一つ目の実験では,ディズニーの広告の中で被験者が子供の頃にミッキーマウスとあくしゅしたことがあることを示唆されます.
コントロール群と比較すると,その広告は,ディズニーリゾートでミッキーと握手したという個人的な記憶の信頼性を増加させました.
信頼性の増加は,真の記憶の復活もしくは新しい偽記憶の作成のせいだと考えられます.
二つ目の実験で,被験者は次のディズニーの広告を見ます.その広告では,バッグス・バニーのような,実際にはあり得ないキャラクターと握手したことを示唆するものでした.
こちらの実験でも,コントロール群と比較すると,その広告は実際にはあり得ないキャラクターと子供の頃にディズニーリゾートで握手したという個人的確信を増加させました.
確信度が増加したことは,昔の記憶を想起する広告の内容が偽記憶を生成することが可能であるという仮説と矛盾しない結果だと言えます.
正確なcitationとしては,以下のような感じです.
Braun, K. A., Ellis, R. and Loftus, E. F. (2002), Make my memory: How advertising can change our memories of the past. Psychology and Marketing, 19: 1?23.
ググると一つ日本語の記事が出ましたので貼っておきます.
第2回 記憶はあてにならない | ビズハック! ビズハック!
広告も記憶に大きな影響を与えるキューとなる。
2002年に、広告が消費者の過去の記憶を変えることができるという実験結果が論文として発表された。要約すると、被験者である大学生に過去をなつかしく思い出させるようなディズニーランドの広告を見せた・・・「子供時代を思い出してごらん・・・両親にやっと連れてきてもらったディズニーランド・・・初めてミッキーを間近に見て、ママに押されるようにして近づいて・・・そして、ミッキーと握手をしたときのあの興奮!」。ただし、学生たちに見せた広告では、ミッキーマウスではなくバックスバニーとなっていた。バックスバニーはアメリカでは有名なキャラクターだがディズニーランドのものではない。なのに、この広告を見せられた学生の16%は、実際には起こりえなかった出来事(つまりディズニーランドでバックスバニーと握手するということ)を自分は記憶していると主張したのだ。
こんなに広告と関係する内容が出てくるなら,有給を取らないでしっかり出張扱いで来ればよかったよ...