「情報幾何の新展開」への期待

「数理科学」誌の2010年10月号より,甘利俊一先生の「情報幾何の新展開--脳と情報の数理科学」が始まったようです.
タイトルだけ読むと,別にいつもの甘利先生の記事のようですが,ちょっと期待しています.
一つはこの号が,特集「局面の不思議」であって,微分幾何学の特集であること.微分幾何学多様体論は,私の博士論文のテーマが一般相対性理論だったことからも,大昔に必死に勉強しました.第二に,記事の冒頭,

(中略)
何しろ微分幾何をまっとうに使うという筋書きは,工学者からは敬遠される.
若いころはまっとうな数学にあこがれるので,記述もついそちらを向いてしまう.
(中略)
70歳をというに越え,後期高齢者も近づいた今,情報幾何の真髄を極めてやさしく,広い構想で書いてみたくなった.

一応プロのはしくれなので,やさしくなくても良いのですが,新たな構想で書いて頂けるのはきっと新たな着想に結びつくのではないかと期待してしまいます.
若い頃は統計や確率は苦手で,数学といえば無限回数微分可能な滑らかなものしかできませんでしたが,わりと純粋数学の分野でガウス・ボンネの定理で大局と局所が結びつき,多様体と双対の原理で確率と幾何学が結びついてしまうと,若い頃に思っていた「全ての自然科学は数学を基礎とする」というのが真実に思えてしまいます.
コンピュータは,例えば動作原理やプログラミング理論はオートマトンで幾何的に説明が付きますから,当然,数学の一部です.