インフルエンザに対するマスクのウソ

考えてみれば当たり前のことなのですが,どうもマスクの能力が過剰評価されているような気がしますので,書いてみます.

ウィルスの大きさは,ナノメートルのオーダーです.
Orthomyxoviridae - Wikipedia, the free encyclopedia

The virion is pleomorphic, the envelope can occur in spherical and filamentous forms. In general the virus's morphology is spherical with particles 50 to 120 nm in diameter, or filamentous virions 20 nm in diameter and 200 to 300 (-3000) nm long.
(適当な訳)
ウィルス粒子は多形性であり,外皮は球もしくは糸状の形を取ります.
一般に,ウィルスの形状は50ナノメートルから120ナノメートルの直径を持つ球状,あるいは直径が20ナノメートルで長さが200ナノメートルから300ナノメートルの長さを持つ糸状です.

ウイルストピックス[インフルエンザウイルスについて]

A型、及びB型インフルエンザウイルスは、宿主細胞膜由来の脂質二重膜よりなる外被(エンベロープ)で囲まれた直径 100〜250nmの粒子の中に、NPをとりまく8本の分節型マイナス鎖RNAゲノム(PB2、PB1、PA、HA、NP、NA、M、NS)とウイルス RNAポリメラーゼ(PB2、PB1、PA)からなるRNPが存在する。


一方で,マスクがどれくらいの大きさの粒子を防ぐことができるかというと,
マスク - Wikipedia

サージカルマスクの規格

マスクの性能を表す指標としてBFE(細菌濾過効率)とPFE(微粒子濾過効率)がある。前者はマスクによって細菌を含む粒子(平均粒子径4.0〜5.0マイクロメートル)が除去された割合(%)、後者は試験粒子(0.1マイクロメートルのポリスチレン製ラテックス球形粒子)が除去された割合(%)のことである。アメリカ食品衛生局では、サージカルマスクの基準をBFE95%以上と規定している。

サンエムパッケージ株式会社 [マスクの豆知識]

●細菌ろ過効率(BFE)とは?
ブドウ状球菌(約3μm)をマスクに通し、数値が高い方が性能が良く、医療用マスクでは、95%以上の性能が求められます。

●ポリスチレン粒子のろ過効率(PFE)とは?
ポリスチレン粒子(0.1μm)をマスクに通し、数値が高い方が性能が高いことになります。

このように,基準が(数値を小さく見積もったとしても)0.1マイクロメートル〜3マイクロメートルとなっております.この単位をナノメートルに変えると,マスクが防御できる大きさは100ナノメートルから3000ナノメートルとなります.
つまり,BFEの方を基準にすると,3000ナノメートルのマスクの穴の中を,100ナノメートルのウィルスは30匹(?)並んでも入ることができます

ただし,実際にインフルエンザに罹患している人がくしゃみやセキをする場合,間違いなくウィルスは唾液に混ざって飛翔するでしょう.唾液はウィルスに比べると巨大であり,唾液ごとウィルスがマスクでストップする可能性は非常に高いです.だから,既に病気になっている人がマスクをすることは,非常に意味があります.ただし,健康な人がマスクをしていても,ほとんど意味がありません.
ましてや,マスクを使い捨てや頻繁に洗浄することを怠って,使いっぱなしなんてことをすると,返って害になります.

恐らく,インフルエンザが広まる一番大きな要因は,接触感染です.
インフルエンザウィルスは,くしゃみやセキで空気中に唾液とともに飛び出て何か物体にくっついても,数10時間は生きていると言われています.よって,電車や店でモノに触って,インフルエンザウィルスが手につく可能性は非常に高いです.従って,最も効果がある防御方法は,ひんぱんに石鹸等を使って手を洗うことです.


もっとも,インフルエンザには潜伏期間がありますので,潜在的に誰もが罹患していると考えると,マスクをして広めないようにすることは,良いことです.ただし,マスクをしていればインフルエンザを防げると考えることは間違っています.
そして,使い捨てのマスクを使って頻繁に取り替えるか,布繊維性のマスクならば頻繁に中性洗剤等で洗って使用しないと,ウィルスを溜め込むばっかりで,インフルエンザを防ぐ意味はありません.返ってインフルエンザウィルスの塊の爆弾を作っているようなもんです(生物兵器作成?).