二人の確信的殺人鬼

2008年に入って,堂々と殺人を公言する2名の人物が話題です.一人は公人なので,全て報道されています.
鳩山邦夫法務大臣(2008年4月21日現在)です.

http://www.asahi.com/national/update/0410/TKY200804100076.html

4人死刑執行 鳩山法相のもと10人目「今後も粛々」

2008年04月10日13時25分

 法務省は10日、同日午前に4人の死刑を執行したと発表した。鳩山法相が昨年8月に就任以来、執行は昨年12月の3人、今年2月の3人に続いて3回目で計10人。法相は午前11時からの記者会見で「これからも、粛々とやらせていただく」と語った。これで確定死刑囚は104人になる。

 一時止まっていた執行が93年に3年4カ月ぶりに再開されてから、1人の法相のもとでの10人の執行は長勢前法相と並んで最多。前法相は4カ月に1度だったが、鳩山氏は2カ月に1度の間隔で執行命令を出していることになる。

 また、死刑判決の確定から執行までの期間は07年までの10年間でみると平均8年だったが、この日執行された4人のうち3人は確定後4年以内だった。

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080410k0000e040040000c.html

死刑:4人を執行 鳩山法相命令は3回目、計10人に

 法務省は10日、4人の死刑を執行したと発表した。執行されたのは坂本正人(41)=東京拘置所収容▽岡下香(61)=同▽中元勝義(64)=大阪拘置所収容▽中村正春(61)=同=の各死刑囚。死刑執行は2月1日以来。鳩山邦夫法相による命令は3回目で計10人に上る。現在、収容中の死刑囚は104人になった。

 死刑執行は法相の命令が出なかったことによる約3年4カ月の中断を経て、93年3月に再開されたが、それ以後の執行数は計67人。再開以降でみると、昨年8月に就任した鳩山法相の執行数は長勢甚遠前法相と並んで最も多く、約2カ月に一度という異例のスピードで進んでいる。

ご本人のWikipediaでの紹介はこちら.
鳩山邦夫 - Wikipedia

ご本人自身のページはこちら.
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超ハイペースのトンデモない殺人鬼ですが,殺した死刑囚の氏名や時期等を公開したという情報公開の実績は,持論の上とはいえ,極秘裏のうちの行われてきた日本の死刑制度史上,評価せざるを得ません.死刑制度が是か非かに関わらず,情報が無ければ議論にもなりませんから.


もう一人は一般の民間人なので,ここでは名前は書きません.
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080420k0000m040091000c.html

光母子殺害:「死刑判決信じる」 控訴審判決前に
(中略)
 元少年に死刑を求め続けてきたことについては「人を殺した者は命をもって償うべきだが、それが正しいか今も葛藤(かっとう)している」と打ち明け「死刑制度について訴えることは、社会に命の重さを伝える機会になると信じている」と語った。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200804190117.html

光母子殺害事件「死刑判決出ると信じている」

2008年04月19日

 山口県光市で99年に起きた母子殺害事件で殺人、強姦(ごうかん)致死、窃盗の罪に問われた元少年(27)の差し戻し審判決が22日に広島高裁で言い渡されるのを前に、事件で妻子を奪われた会社員が19日夜、光市内で記者会見した。「9年は長い歳月だったが、遺族全員の希望だった死刑という判決が出ることを信じている」と話した。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080419/trl0804192208009-n1.htm

2008.4.19 22:07
このニュースのトピックス:刑事裁判

 これまでにも再三、法廷や記者会見の場で被告に極刑を求めてきた。時に感情を高ぶらせながら、時には淡々と。しかし口調は違えども、一貫して求め続けたものは「命を奪われた妻と娘への償い」だった。

 「司法に絶望した。(死刑にしないなら)被告を早く社会に出してほしい。私がこの手で殺す」

 平成12年3月22日。被告を無期懲役とした1審・山口地裁判決後の会見で、判決への怒りをこう表現した。高ぶる感情を抑えきれず、言葉は時折、涙で詰まった。

 続く控訴審では13年12月、1審では認められなかった意見陳述を行い、被告に「君(きみ)」と語りかけた。

 「妻と娘の最期の姿。それが、君の犯した罪だ。妻と娘の最期の表情や言葉を、君は忘れてはならない。君が犯した罪は万死に値する」(中略)
 「人の命を身勝手にも奪った者は、その命をもって償うしかないと思っています。それが私の正義感であり、私の思う社会正義です。そして、司法は社会正義を実現し、社会の健全化に寄与しなければ存在意義はないと思っています。私は妻と娘の命を奪った被告人に対し、死刑を望みます」

このうち,「私がこの手で殺す」は,産経新聞以外では書かれていないので本当の発言かどうか怪しいのですが,死刑制度に対する矛盾の最たるものです.発言を並べますと...

「司法に絶望した。(死刑にしないなら)被告を早く社会に出してほしい。私がこの手で殺す」
「人の命を身勝手にも奪った者は、その命をもって償うしかないと思っています。それが私の正義感であり、私の思う社会正義です。」

じゃ,自分で被告を殺した場合,あなたはその命をもって償うのでしょうか?
「人の命を身勝手に」奪ったわけじゃないから許される,とはならないでしょう.身勝手かどうかは誰が判断するか.司法なり社会なりでしょうが,少なくともあなた本人じゃありません.

死刑求刑に対し,どれだけ誤判があったかについては,こちら.
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/muzaihannketu.htm

アムネスティ系の日本語サイトはこちら.
http://homepage2.nifty.com/shihai/
この中で,「いっぱしの知識人ぶっている」(笑)ということで余り好きではない,雨宮さんが良いことを言っています.
http://homepage2.nifty.com/shihai/message/message_amamiya.html

死刑賛成論は被害者の人たちの立場に立った論のようにいっていますが、それでは全然解決にはならないと思います。

皆さん死刑についてよくわかっていない、特に執行する人の問題というのを私は考えます。労働者の問題としての死刑執行といいますか

そう,これは前述の,被害者が「私がこの手で殺す」という発言にリンクします.被害者感情を考慮するなら,そうすれば良いのです.
司法に絶望したなら,法を破ってでも被告を殺してはいかがですか?何も,行政の死刑執行係の人にお任せにせずに.


私の意見は変りません.死刑制度の議論については出尽くされているので書きませんが,個人的には次の一言だけでも死刑制度廃止に値すると思っています.すなわち,「誤判の可能性がゼロでは無い」と.
ああ,ちょっと数学屋らしいかも.確率統計論に基づく議論ということで.