第2回 「エジソンの母」

前に「つまらなかった」と感想を書きつつ,また見てしまいました...
科学的に正しくない『エジソンの母』 - なぜか数学者にはワイン好きが多い

今回の科学ネタは,例えば2点.


1. パンゲア
(準主役の花房賢人君)「先生!これはパズルです!」
(花房君のクラスの副担任)「先生,ちょっと待って下さい.これは..超大陸パンゲア?!これを,ウェゲナーの大陸移動説と言います.」

2. メビウスの輪
病院の看護士さんが,メビウスの輪真ん中から切ると,二つにならずに大きな一つの輪になることを説明していました.



今回は,説明が簡単なせいか,前回の「1+1」の数学的な説明のようなウソは無かったと思います.


で,ちょっと反省した,冴えない数理科学者がここに居たりするのです...「説明がウソだ」とか書きつつ,科学者達はそんな説明・紹介すら子供たちにしていなかったのでは無いかと.
今回も,例えばパンゲア大陸移動説に触れるのだったら,プレートテクトニクス理論・プルームテクトニクス理論の言葉くらい出して欲しかったとか,メビウスの帯に触れるんだったら1回ひねった帯だけじゃなくて2回ひねった帯も紹介するとかやってくれれば...と思ったのですが,この番組を見ている子供が,「パンゲア」「メビウス」の言葉だけでも印象に残って,学校の先生に質問なんかしたら,それはとても有意義なことです.
パンゲア」は小学校の先生の半分くらいは知っているでしょう.中学校以上の理系の先生だったら,100%知っているでしょう.
メビウス」は,番組で説明した「裏表が無い」というくらいしか知らない先生方が多いかもしれません.
でも,そんな微かな興味を持たせる努力すら,科学者や研究者はしていないのかもしれない,だったら「エジソンの母」のような番組の方が,科学者よりもよっぽど科学の啓蒙活動をしているような気がします.


そんなわけで罪滅ぼしに,補足です.

1. パンゲア
大陸が移動する原因は,前述のプレート&プルームテクトニクス理論とされています.これは,大陸の地下にある巨大な岩石が動くという理論で,現在では人工衛星等からの観測で,ほぼ実証されています.で,なぜ岩石が動くかと言うと...
中学校の理科では,「物質の三態」というのを習います.この世のあらゆる物体は「液体」「固体」「気体」のどれかになるというお話です.
しかし,ここ数十年の科学界では,物質は高々3種類に分けられるものじゃないということが認識されてきました.例えば(私の記憶では)1980年代にコンピュータ・シミュレーションによる実験結果と絡んで流行した「粉体」があります.これは文字通り粉のことで,砂やら小麦粉やら何でも該当します.ちょっと考えると「固体」のような気がしますが,ザーっと斜面に流したらサイコロのように転がらずに「流れる」ような動作をしたり,ブン投げたら気体のように舞ったりと,「こたい」じゃなくて「液体」と「気体」の中間じゃないかと言われ,「粉体」という名が付いたものです.
同様に,固い岩石も,巨大な大きさと長い年月で観察すると,「液体」のように流れ動くことがある,これが「大陸移動」の原因です.

2. メビウス
メビウスの帯には色々不思議な性質があるように感じますが,これは実世界の多くの物質が裏表があるからです.だからたまたま,裏表が無いものがあると,不思議に思えてしまうのです.
例えば,「閉じた宇宙論」というのがあります.これはアインシュタインも当初考えていたもので,宇宙は裏表がない空間ではないかという理論です.メビウスの帯は裏表がないので,ある場所から帯に沿って歩いて行くと,帯の裏と表の全部を歩いて元の場所に戻ります.「閉じた宇宙論」では,例えば地球から真っ直ぐ歩き始めて,宇宙をどんどんどんどん歩いていくと,いつか宇宙の裏と表の全部を歩いて,また地球に戻ってきます.つまり,「宇宙の果て」は無く,「宇宙の外側」というものもありません.数学用語で「閉多様体」と言いますが(一昔前の科学者・研究者の方なら,「多様体」じゃなくて「時空連続体」と知っているかもしれません),これも裏表がある実世界で生活する一般の人には中々イメージし難いようです.どうしても球のような宇宙を想像して,その外側が存在する感覚を持ってしまうみたいです.外側はありません.(上手く説明できなくてスミマセン)

なお,今回の「エジソンの母」で「おおっ!」と思ったのは,次のようなシーンでした.

(学年主任の加賀見祐子)「あなたは一生一人で空なんて飛べないのよ.分かった?!」
(子役の花房賢人君)「ごめんなさーい」

ここで,「ごめんなさーい」と言いつつ,良く見ると眉をちらっとしかめるんですね.謝りながら,ちらっと眉間にシワを寄せるんです.色々な感情(イラつきながら取りあえず謝ったのかもしれないし,反省して辛く思ったのかもしれないし...)を感じて,子役の演技の上手さに感心しました.


ちなみに,テレビを見ていたらすっかりワインで酔っ払ってしまって,そのまま仕事しつつテレビを見ていたのですが,「世界弾丸トラベラー 神秘オーロラ 田中美保」という番組を流し見していて,ちょっと反応してしまいました.
モデルの可愛い女の子がカナダにオーロラを見に行く,結果的に見られなかったという番組だったのですが,曇った天候ではオーロラが見られない,晴れさせるためのおまじないとして,ドリーム・キャッチャーが出てました.
私はオカルト好きですが,ドリーム・キャッチャーを知ったのは,スティーブン・キングの小説でした.
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%80%881%E3%80%89-%E6%96%B0%E6%BD%AE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%83%B3-%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0/dp/4102193278

この小説については,以前にも感想を書いたのですが,B級ホラー作家としてのキングファンには傑作です.ドタバタでグチャグチャで荒唐無稽で,正当派純文学しか読めない人にはダメダメの印象を持たれる小説です.でも,B級大好きの私にはとても面白かったです.
それを読んで以来,各地の観光土産屋でドリームキャッチャーがあると,つい反応してしまいます.