脳は記憶のために,20%の細胞しか使っていないかもしれない

「人間の脳は,その数%しか使われていない」という話は有名な都市伝説ですが...

http://www.sciam.com/article.cfm?chanID=sa003&articleID=0BF4BCC9-E7F2-99DF-3FBDF4769A628403

Researchers injected a vector designed to return CREB production to normal in mice that had been genetically modified to underproduce the protein. After being injected, these mice, who also were memory-impaired, performed as well as normal mice in memory tests. During the trials, researchers played a sound and then shocked the animals; when the sound was played again, normal mice and those with rescued CREB function froze -- for a certain[short?] period of time -- a reaction typical of fear.

When the researchers later dissected the mice's brains, they found that the fluorescent probes they had attached to the CREB vectors showed they had affected only about 20 percent of the neurons in the lateral amygdala.
超訳
研究者は,タンパク質を生成できないように遺伝子操作されたマウスに対し,CREB生成を通常に戻すような作用を持たせた媒介物を注射した.注射されたあと,記憶障害を持っていたそれらのマウスは,記憶テストにおいて普通のマウスと同様の成績を記録した.テストの間,研究者は音響により動物にショックを与え続けた.再び音響を与えた時,通常のマウス及びある期間(短期間?)内にCREB機能を回復させたマウスは,「恐怖」を感じている様子が観察された.

その後,研究者がマウスを解剖し脳を調べると,CREB媒介物の影響を受けたことを示す蛍光色の証拠を発見した.それらが示していたのは,小脳扁桃側面のうちの約20%のニューロンのみが媒介物の影響を受けたということであった.

分かったのは,CREBというタンパク質と学習能力が強く関係しているらしいということのようです.

ただし,脳というのは複雑に絡み合って機能しており,「CREBタンパク質を大量生成(摂取?)すれば記憶能力が増強する」というようなことは無いと思います.右脳と左脳の働きの違いのようなもので,左脳人間・右脳人間というのも都市伝説です.どこかの機能が損なわれたら違う部分がその機能を代替したりと,脳ははっきりと分離して機能しているのではないことがほぼ確実になっています.

それにしても記憶の仕組みは,医学者のみならず心理学者,人工知能研究者等,多くの人が関心を寄せる事項です.もっと研究が進むと良いですね.