数学とコンピュータで,合成写真を見破る

Computing Photographic Forgeries

Last August, a photograph from Reuters appeared in newspapers around the world showing smoke plumes billowing from buildings after an air strike in Beirut. Bloggers soon noticed a strange repeating pattern in the smoke. A portion of the photograph, they said, had been copied and repeated in the picture, exaggerating the amount of smoke and destruction.

Reuters rapidly admitted that the photograph had been faked and removed it, along with 920 other images from the same photographer.
超訳
昨年8月,ロイターが提供した,ベイルートの町並みを襲った噴煙の写真が世界を駆け巡りました.が,ブロガーたちは,すぐに煙の奇妙な繰り返しパターンに気付きました.その写真の一部は,その写真自身の中からコピペされて,煙や破壊度合いを誇張していました.


ロイターは直ちにその写真が作り物であることを認め,削除し,さらにはその写真を提供した写真家の920枚の写真も削除しました.

さて,最近ではPhotoshopまで使わなくても,十分にリアルなフェイクの写真やCGが作れる時代ですが,この記事によると,ダートマス大学のフェイリッド教授が,数学を用いてフェイクを見破ったとか.
どうやったのかと思って参考文献に挙げられている論文の一つ,2005年のACM Multimedia and Security Workshopの論文を流し読みしてみると,写真に写っている物体の明るさの変化から,光源の向きを推定しているようです.
論文では,記事に載っているジョン・ケリージェーン・フォンダの合成写真の例も載っていました.二人に当たる光の光源の方向を推定したところ,方向が違ったそうです.基本的には簡単な反射光・拡散光に関する物理的な方程式が用いられており,「数学を用いて」というほどではありません.しかし,曲面を平面パッチの集合で表すなどコンピュータ・グラフィックスやコンピュータ・ビジョンの技術が駆使されており,どちらかというと理学的よりも工学的な研究のようです.


ブラッド・ピットニクソンプレスリーの合成写真も載っていて面白いですから,ぜひ,PDFの論文を眺めてみて下さい.