2006年の死刑執行

やはりこのような微妙なネタに関しては,報道各社で表現がずいぶん違いますね.
http://www.asahi.com/national/update/1225/TKY200612250144.html

 就任3カ月足らずの長勢法相が執行命令書に署名した背景には、執行されていない死刑確定囚が100人近くに上る現状で、「今年の執行数をゼロにすることは絶対に避けたい」という法務官僚の強い意志があった。

 裁判所が死刑判決を「量産」し、死刑確定者は06年は20人を超えた。一方、実際に死刑囚の命を奪うことになる命令書の署名には消極的な法相も多く、その結果、03年までは50人台で推移してきた未執行者は25日現在で98人に。法務省幹部は「100人を超えれば死刑制度の根幹が疑われることになる」と危機感を持っていた。


http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20061225i204.htm

 執行されたのは秋山芳光死刑囚(77)(東京拘置所)、藤波芳夫死刑囚(75)(同)、日高広明死刑囚(44)(広島拘置所)、福岡道雄死刑囚(64)(大阪拘置所)。法務省は25日、執行の事実と人数だけを発表した。


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前任の杉浦正健元法相は死刑執行命令書に「サインしない」と明言し、05年11月の就任から退任までの10カ月間執行をしなかったが、長勢法相は「法治国家で確定した裁判の執行は厳正に行われるべきだ。法の規定に沿って判断したい」と述べていた。


アムネスティ・インターナショナルによるコメントは,こちら.

抗 議 声 明

 死刑の執行に抗議します。

 本日、死刑確定者の日高広明さん(広島拘置所)、福岡道雄さん(大阪拘置所)、秋山芳光さん(東京拘置所)、藤波芳夫さん(東京拘置所)に対して死刑が執行されました。私たちはこの執行に対して強く抗議します。本日の死刑執行は、国会閉会中を選んで行われました。また、今回の死刑の執行についても、本人や家族を含め誰にも事前の予告はなく、突然に行われました。

 日本は先進国の中で死刑を廃止していない少数の国ぐにのひとつです。死刑廃止国数は着実に増加しており、現在ではすべての犯罪につき死刑を廃止している国が88、一般刑事犯について死刑を廃止している国が11、10年以上執行を行なわず事実上死刑執行を停止している国が29となっており、死刑を法律上または事実上廃止している国の総数は128カ国に達しています。この数字は、死刑存置国69カ国を大きく上回っています。

 アムネスティ・インターナショナルはあらゆる死刑に反対し、死刑制度の廃止を訴えています。2006年7月には日本の死刑に関する包括的な報告書「今日が最期の日?日本の死刑」(ASA22/006/2006)を発表し、日本政府に対し死刑という人権侵害を止めるよう求めました。日本では高齢者や精神を患った死刑囚が、何十年も独房で事前に執行日を教えられることもなく突然の処刑を待っている事実を指摘し、死刑廃止への第一歩として、まず死刑をとりまく秘密主義に終止符を打つよう日本政府に要請しています。

 フィリピンは今年6月に死刑を廃止しました。日本ではカトリック教会の圧力で大統領が政治的判断で死刑を廃止したとの報道がなされましたが、実際は市民団体を中心に運動し、死刑は正義ではなく、罪を償う方法は他にもあると訴えた結果の死刑廃止でした。死刑は人間の尊
厳と品位を傷つける人権侵害であるとの認識は、国境や文化を超えて広まってきているのです。

私たちは、いかなる状況下においても死刑に反対します。死刑は生きる権利の侵害であり、残虐かつ非人道的で品位を傷つける刑罰です。日本が死刑を廃止する一歩を近い将来に踏み出すことをアムネスティは期待しています。

2006年12月25日             社団法人アムネスティ・インターナショナル日本