電気椅子の死刑禁止判決

色々な意味で殺人大国であるアメリカで,ハリウッド映画でもしばしば現れた,電気椅子による処刑が違法だとする判決です.

http://www.asahi.com/international/update/0209/TKY200802090226.html

米で唯一の電気いす死刑、最高裁「禁止」 ネブラスカ州
2008年02月09日18時44分

 米ネブラスカ州最高裁判所は8日、電気いすによる死刑執行は残酷で異常な刑罰だとして、禁止を命じる決定を言い渡した。AP通信が伝えた。同州は死刑執行に電気いすだけを使う全米唯一の州。最高裁は「感電死は激痛をもたらすという証拠がある」とした。

しかし,注目すべきは記事の後半です.

 同州では以前、電気いすを廃止し、薬物注射に変える動きがあったが、一部の反対で実現していなかった。州司法長官は裁判所に決定の再考を求める方針という。州内には現在、10人の死刑囚がおり、最後に死刑が執行されたのは97年だった。

ここです.『州内には現在、10人の死刑囚がおり、最後に死刑が執行されたのは97年だった。』
さて,州と国じゃ大きく違いがありますが,最後の死刑執行が10年以上前とのことです.振り返って日本はどうでしょう.

http://mainichi.jp/select/jiken/archive/news/2008/02/01/20080201dde001040038000c.html

死刑執行:3人に執行 法務省が氏名公表

 法務省は1日、死刑囚3人の死刑を執行し、氏名と犯罪事実などを発表した。執行されたのは持田孝(65)=殺人罪など、東京拘置所収容▽松原正彦(63)=強盗殺人罪など、大阪拘置所収容▽名古圭志(37)=殺人罪など、福岡拘置所収容=の3死刑囚。これで、現在収容中の死刑囚は104人になった。

 執行された死刑囚の氏名公表に踏み切った昨年12月7日以来の執行で、鳩山邦夫法相による命令は2回目。死刑執行は約3年4カ月の中断を経て、93年3月に再開されたが、以降の執行人数は計63人になった。再開以降で、前回の執行から2カ月未満で執行が命じられたのは初めて。
(中略)
毎日新聞 2008年2月1日 東京夕刊

日本では,最後に執行されたのは,少なくとも2週間前ですね.

理論的には,死刑制度は存在の意味はありません.これはもう何十年の議論から明白です.
死刑存置論者の人たちの意見の中で,最後に生き残るのは次の2点です.
(1) 被害者の気持ちはどうなるのかという感情論,(2) 税金で犯罪者を生活させるのかという非建設的論.

しかし,これらも完膚無きまでに論破されていることです.
まず,被害者,例えば殺された人の遺族のことを考えましょう.当然,真犯人を憎み,殺したくなるかもしれません.しかし,それは心理学的なケアの問題です.何も殺人事件に限りません.例えば親に虐待された子供が,大人を憎むようになったとします.それは心のケアの問題であり,大人を殺せばその子供の気分が晴れて幸せになるというものではありません.
被害にあった人たちの精神的なカウンセリングを充実させるような方向に議論を進めるべきです.
次に,死刑囚が収容されている刑務所の諸経費の問題です.これはほとんど無意味で,死刑囚をタダ働きさせたり,殺すくらいだったら学術的や医学的に役立つように人体実験(生きたまま解剖するとか,内臓を取るとか)すれば,経費はプラマイゼロになるでしょう.

電気椅子でローストにしてしまったら,死体を解剖して学術的な研究に使うこともできなくなりますから,ネブラスカ州の判断は真に正しいと言えます.
それに対し,次々と絞首刑を行う日本は完全に間違っています.ましてやゴーサインを出し続けている鳩山法務相は,彼こそが無差別殺人者です.

繰り返しますが,死刑制度は「冤罪の可能性がゼロでは無い」という一言だけで,廃止するべきだと思います.