公務員減らし政策成功?

私も一時期,国家公務員だったことがあります(一種扱い).

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070620i113.htm

国家公務員を志望しない大学3年生を対象に、その理由(複数回答)を聞くと、最も多かったのが「保守的で創造的な仕事ができそうにない」(41・9%)で、「不祥事などで社会的イメージが悪い」(20・2%)も上位に挙げられた。

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007062001000554.html

白書は、志望者減の要因として(1)官製談合など相次ぐ不祥事による、公務員の信頼や評価の低下(2)法科大学院などが新設され、専門性を生かせる就職先を選択するようになった−などを挙げた。

上の二つの記事でそれぞれ公務員離れとして二つの理由が挙げられていますが,表現こそ違いますが同じ意味に思えます.そして,どちらも私から見ても同意です.


私の場合,研究員だったので,公務員試験一種の資格は必要ありませんでした.同期の事務系の人たちは,一種を持っていました.しかし,国家公務員試験一種を取って国家公務員になったはずの彼らも,公務員ではなくなります.例えば,既に国立大学教員の人たちが同じ境遇に陥っています.

以前は,以下の図式が成り立っていました(外部機関からの常勤派遣職員等,一部を除きますが).

国立機関常勤勤務=国家公務員

ところが,国立機関は次のように変わってしまいました.

国立機関→(1)国立機関,または(2)独立行政法人

さらに,独立行政法人に種類が増えました.

独立行政法人→(1)公務員型独立行政法人,または(2)非公務員型独立行政法人

非公務員型独立行政法人の代表格は,やはり独立大学法人です.今や東大や京大の教授も,国家公務員ではありません.

独立行政法人は,国の予算の交付を受ける(運営費交付金)という意味では,事実上,国家機関に近いものがあります.しかし,その予算は「安定した国立機関」のイメージは程遠く,予算が8割削減された大学もあります.
http://innovation.nikkeibp.co.jp/etb/20070523-00.html

一方、全国の国立大学の85%に当たる74大学で交付金の減額となる。特に交付金が50%以上減額となる大学をみると、(1)兵庫教育大学(2)愛知教育大学(3)京都教育大学(4)鳴門教育大学(5)福岡教育大学(6)北海道教育大学(7)東京芸術大学(8)大阪教育大学(9)宮城教育大学(10)上越教育大学(11)福島大学(12)滋賀大学(13)大分大学(14)奈良教育大学(15)東京学芸大学(16)東京海洋大学(17)筑波技術大学(18)佐賀大学(19)鹿屋体育大学(20)和歌山大学(21)琉球大学(22)山梨大学(23)小樽商科大学(24)香川大学(25)島根大学(26)滋賀医科大学(27)高知大学(28)大阪外語大学(29)弘前大学(30)岩手大学(31)総合研究大学院大学(32)宇都宮大学(33)宮崎大学(34)鹿児島大学(35)富山大学(36)室蘭工業大学(37)信州大学(38)鳥取大学(39)旭川医科大学(40)岐阜大学(41)福井大学(42)秋田大学(43)政策研究大学院大学(44)帯広畜産大学(45)山形大学(46)京都工芸繊維大学(47)茨城大学(48)三重大学(49)北陸先端科学技術大学院大学(50)奈良女子大学――の50大学(減額率の大きい順)となる。教員養成系の地方の教育大学で、減額率が80%を超えるところが多い。

結構な名門大学が入っているではありませんか.兵庫教育大,京都教育大,東京芸大,和歌山大,琉球大,高知大,大阪外語大,京都工繊大,奈良女...総研大って,天皇一族御用達の大学院ですよね.予算削ってよろしいのか,ってそれより,

科研費を指標とした試算では、(1)東京大学(2)京都大学(3)東京工業大学(4)名古屋大学(5)東北大学(6)大阪大学(7)東京農工大学(8)北海道大学(9)奈良先端科学技術大学院大学(10)九州大学(11)一橋大学(12)神戸大学(13)長岡技術科学大学――の13大学で、同交付金が増加する(増額率の大きい順)。旧帝国大学の7大学すべてがランクインしており、特に上位3大学である東京大学京都大学東京工業大学では100%(倍額)以上の伸びとなる。

奈良先端大が「勝ち組」で,北陸先端大が「負け組」に入ってるというのが,全く理解できません.


閑話休題

それでも,自分に自信があって研究者・科学者を目指す人は,国家公務員を目指すのも悪くはありません.「保守的」「不祥事」というマイナスイメージがあっても,何といっても予算(研究費)が莫大です.比較的お金を使わない数学者や理論物理学者の方は,国立の研究所じゃなくても良いかもしれません.でも,実験物理学者や,電気工学者の方は,年度末になると「予算執行残高ゼロ円を目指して」というメールが来る,国立系の研究所を目指すと,かなりのお金を使えます.

ただし,好きな研究ができるわけじゃありません.まさに読売新聞の記事中にあった「保守的で創造的な仕事ができそうにない」というのを,いかに時間を作って予算を何とか獲得して,政府から降ってきた研究をこなしつつ自分のやりたい研究をする,ということになります.
それが嫌な方は,海外逃亡しかありません.

幸い,日本にもパワフルな研究者陣がいるので,政府からの命にめげずに世界的な成果をあげている群がおります.それに,インターネットの普及のおかげで,海外の論文を無料(プレプリや,著者が公開しているもの)もしくは安価(学会費等を払えばダウンロードできるもの)で入手できるようになったので,予算潤沢な組織に属さなくても研究ができる時代になったと思っています.
(ネットがなかったら,海外の文献を取り寄せるには結構なお金がかかりました.コピー代+送料.)

しかし,現地調査等を伴う考古学者や物理学者,電子化されていない文献収集が必要な言語学者社会学者の方々は,お金がないのは大変なことでしょう.

そもそも公務員を減らすという国策は,民衆の「税金で生活しているくせいにロクな働きをしていない」という批判により,「ならばそんな公務員は減らしましょう」と言い出した政府に寄ります.そんなマイナスな思考より,「ならば公務員の仕事の効率化を計ります」と言う方がよっぽど良いでしょう.特に,教育機関や研究機関の予算を減らして国に将来があるか.愚問ですね.