ハーバード大国際「女性と科学」シンポジウム

http://www.news.harvard.edu/gazette/2007/04.19/13-womensci.html

Frances Allen, an IBM Fellow Emerita at the T.J. Watson Research Laboratory and the first female winner of the Association for Computing Machinery’s Turing Award, offered an explanation for the level of participation by women in her field. When she was starting out in the 1950s, in the early days of computers, before there was a field of computer science, programming was open to people, including women, from a wide range of backgrounds. But as the field matured and became more structured in the 1960s, industry began requiring its new hires to have engineering degrees. That tended to shut out women. “The workplace changed immensely. And in my view, the field has not recovered since.”
超訳
フランシス・アレンはT. J. ワトソン研究所のIBM名誉フェローであり,ACMチューリング賞の初の女性受賞者である.彼女は計算機科学の分野での女性の参加状況について,次のように評した.彼女が1950年代に計算機についての仕事を始めた頃は計算機の黎明期で,「計算機科学」という学問分野すらなかった.プログラミングは,女性を含めた様々な分野の誰もが挑戦することができた.しかし1960年代になって計算機が成熟期を向かえ高度に系統立てられてくると,企業は工学の学位を持つ人を雇用するようになった.それは女性を締め出すようなものだった.「活動の場が非常に変わってしまった.私の考えとしては,計算機科学の分野は未だに元のように戻ってはいない.」

チューリングがイギリスでひっそりと世界初の計算機を作っていた後,しばしば「世界初の計算機」とされるENIACVが開発されたのが1946年とされていますから,1950年代にプログラミングしてたというのは凄いですね.しかし1960年代にコンピュータ・サイエンスが熟成されて複雑な学問体系を向かえてしまったというのは,あまり納得がいかないところです.確かに基本となるプログラミング言語やOSの理論なんかは完成されてましたが(今でも使われているFORTRANなんて,50年代に先月亡くなられたバッカス博士の開発ですし:コンピュータ科学者,バッカス氏死去 - なぜか数学者にはワイン好きが多い),世界初のCPUすら開発されておりませんでしたし,その後に発展したヒューマンインターフェースの理論,ハイパフォーマンス・コンピューティングの理論,高速広帯域ネットワークの理論なんかは60年代にはありませんでした.
それに今をときめくAppleの創業者もMicrosoftの創業者もIBMの創業者も,工学の学位は持っていませんでした(スティーブン・ジョブスはリード大学中退ですし,ウォズニャックはカリフォルニア大学バークレー校を中退,ビル・ゲーツは,ハーバード大学を中退.IBMの創業者とされるT. J. ワトソンはエルミラの商科系の学校を卒業したことになっているが,なにせ時代が違うのでAppleMicrosoftと比べるのは難しいです).


それでも,以前にも書いた通り(女性科学者が10万人超え - なぜか数学者にはワイン好きが多い),

私が大学の頃も,理系の女性はだいたい1割でした.

という状態ですから,まだまだサイエンスの分野に女性が進出した方が良いと思うのは同意です.