「SFはどこまで可能か?」を読んでみました

http://www.amazon.co.jp/SF%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%81%93%E3%81%BE%E3%81%A7%E5%8F%AF%E8%83%BD%E3%81%8B%EF%BC%9F-%E7%A6%8F%E6%B1%9F-%E7%B4%94/dp/4594044174
著者の福江純先生には,一度だけ,研究室にお邪魔して1対1でお話させて頂いたことがあります.
「SFはどこまで可能か?」は,最近買って読んでみたのですが,「やさしいアンドロイドの作り方」という本の文庫版だそうです.内容は軽いですが,楽しく読めました.何が軽いかと言うと,多分,対象読者が違うのだろうと思うのですが,福江先生の訳書「http://www.amazon.co.jp/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%B8%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%93%E3%81%9D-%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB-%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC/dp/489583171X」や,ブルーバックスの「http://www.amazon.co.jp/SF%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%81%93%E3%81%BE%E3%81%A7%E5%AE%9F%E7%8F%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%8B%E2%80%95%E9%87%8D%E5%8A%9B%E6%B3%A2%E9%80%9A%E4%BF%A1%E3%81%8B%E3%82%89%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB%E5%B7%A5%E5%AD%A6%E3%81%BE%E3%81%A7-%E3%83%AD%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BBL-%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%89/dp/4061328018」と比べてということです.


あと,気になったのが,柳田理科雄氏の解説です.

福江純先生は,(中略)専門は天文学,なかでも「降着円盤」である.
降着円盤とは,地球侵略にやってきた宇宙人がどうやってUFOを着陸させるか....を探る学問ではなく,実はブラックホールに関する研究だ.

という冷めるオヤジギャグはともかく,

やがて,回転による遠心力と重力が釣り合い,ガスはブラックホールを取り囲むドーナツのような雲になる.この雲が「降着円盤」だ.

という解説です.解説では,その後,

そこでは,ガスがぶつかり合って非常な高温となり,光やX線を放っている.

とあります.これは正しい.しかし,物理的な力が釣り合っている状態で,なおかつ放射があっては,エネルギー保存の法則が崩れてしまいます.土星等の輪のように,「ドーナツのような」になっている降着円盤は,多分,ありません.常にブラックホール(あるいはクエーサー等の重力場)にガスが吸い込まれて重力ポテンシャルが消費されてこそ,X線のような電磁波が放射されるのであって,吸い込む力と脱出する力が均衡するような「降着円盤」は,あるとしてもブラックホールに関するキーワードでは使われないと思います.