子供たちは森に消えた

http://www.amazon.co.jp/gp/product/4150502188
実に面白かったです.
今では(その筋では)有名な,旧ソビエト〜ロシアの「Andrei Chikatilo事件」についての文庫本です.
アンドレイ・チカチーロの事件の話は,他にこちらの本でも読んでいました.
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4810421872
このタイム・ライフ編のハードカバー本では,凶暴な顔をしたチカチーロの写真が表紙に使われています.
タイム・ライフ編の「True Crime」のシリーズは非常に面白いのですが,その面白さは加害者の立場から描くことで得られています.要するに,まるで見ていたかのような殺人を犯す場面の心理描写が入っています.
その反面,「子供たちは森に消えた」は,チカチーロを逮捕する側の人間の描写によって成り立っています.52人,あるいは53人を殺した犯人のチカチーロは,全約410ページのうち,登場するのは約270ページ目です(写真ページを除く).つまり410-270=140ページに,連続殺人鬼チカチーロが登場します.逆に言えば,全約410ページのうち,約270ページは殺人鬼じゃなくて,主役の捜査官,ヴィクトル・ブラコフと旧ソビエト連邦の描写に費やされています.付け加えますと,さらに,旧ソビエト連邦で,いかに同性愛者が虐待されていたかを描写しています.著者のロバート・カレン氏は,ニューズウィーク誌のモスクワ特派員で,旧ソビエトアメリカの複数の心理学者にインタビューをして著したことからも,この本の信頼性が伺えます.タイム・ライフ編では,確かにロバート・カレン著と同一の記述があったり,凶暴そうなチカチーロの写真だけじゃなく,若い頃の写真を入れている辺りで公平さが感じられますが,約12年間の事件期間を約410ページで描くカレン氏の著書と,「スターリンの落とし子」というタイトルで約70ページで描くタイム・ライフ編では,伝わる度合いが違います.両方を読まないと分からない気がします.


なお,どちらも古書店で入手したようです.早川書房「子供たちは森に消えた」は定価760円のところ,450円(Book Off)というシールがありました.タイム・ライフ編True Crime 続・連続殺人者は,定価1800円のところ,250円のシールが貼ってありました.