親を殺した子供たち

Amazon CAPTCHA
偶然なんですけど,ここのところ読んでた本と似たようなことが書いてました.
例えば,

まず第一に,この意見は一般に精神病者,とくに分裂症患者は,”正常者”よりも殺人を犯す率が少ないという観察結果と矛盾する.
(中略)
こうした仮説はまさしく循環論法にもとづいており,その論旨はつぎの二点に要約される.その一,このような行為を犯せるのは異常者しかいない.その二,それゆえ彼は異常者である.
(中略)
この場合も先に批判したとおなじような循環論法が成立する.その論旨はつぎの通りだ.(1)このような行為を犯せるのは生物学的に異常な者しかいない.(2)この殺人者は子供時代に頭を打ったか足の指が短くて転びやすい者である.(3)それゆえ,,調査の必要はあるが,異常さが殺人行為の「引金」となったのだ.
(中略)
たしかに殺人者の履歴には,児童虐待の事実が散見される.しかし家族殺人の場合,犯人の大半は虐待を受けていない.さらに,虐待を受けてもたいていの子供は殺傷事件を起こさないのに,特定の子供が自分の家族あるいは赤の他人を殺害するのはなぜか.

もっとも,この本の著作者エリオット・レイトン氏は精神科学者でも心理学者でも生物学者でもなく,人類学・社会学者です.
原書はアメリカで出版されたものですが,1ページ目から日本の話題が出てます:

1988年7月に東京で14歳の少年が良心と祖母を刺し殺した.ロンドンのオブザーヴァー紙はつぎのように報じた.「犯罪にいたるまでの計画の周到さ,その殺し方の残忍さ,罪を悔いるようすのない少年の冷酷さよりも,その家庭的な背景が人々に大きな衝撃を与えた.日本の都市では典型的な,勤勉で教育熱心で裕福な上級中流階級(アパーミドルクラス)である」.

まあ,80年代と違って,既に日本もとうの昔にバブルはじけてますけどね.