出張内容

3月の3日から5日まで東京に出張に行きましたが,3月3日の日記ではビジネスホテルだけしか書かなかったので...ちょっと内容書きまする.

早稲田大学・大久保キャンパスであった,応用数理学会研究部会連合発表会

http://jsiam.amp.i.kyoto-u.ac.jp/h18spring/

に行ってきました.普段は「科学技術計算と数値解析」研究部会で講演していたのですが,今回は「応用可積分系」研究部会で発表しました.
僕の今年度最後の科研費の研究発表でした.たぶん.

可積分系の研究は職場では職務とはみなされないので,じっくり研究している時間はなく,2日でネタを考え,6日でプログラムを作って実験結果を出して,2日で発表資料を作って講演しました.合計10日.

さてその内容ですが,ハミルトン力学系の中にスタッケル系と呼ばれる力学系があります.そのこと自体を知ったのも僕はごく最近で,スタッケル系は必ず自由度の数だけ保存量が存在し,保存量を保存するような時間発展の差分式が容易に構成できるということを,上に書いたネタ考えの2日間のうちに知りました.

さて,私が科研費でやっていた研究は,シンプレクティック数値シミュレーションについてです.特に,個人的な興味から,アインシュタイン重力場方程式についてやってました.そして,アインシュタイン方程式の解の中で,最もシンプルなシュヴァルツシルト解は,ハミルトニアンの形で書くとスタッケル系になります.シュヴァルツシルト解は,数学的な見かけ上の特異点があったり極座標系に依存する特異点があったり性質が悪いのですが,とにかくスタッケル系です.自由度の数だけ(3次元空間なら,最低3個)の保存量が存在するはずです.そこでシュヴァルツシルトブラックホール時空で自由度の数だけ保存量を保存する差分スキームを導いてみた結果が,この画像です.なかなか美しいのですが,完全に陽的な差分スキームにはならなかったので,ニュートン法で陰的な連立方程式を解きました.

数学的な結果は今後論文として発表するので置いておくとして,なかなか面白い結果が得られて自分としては満足です.

特に最近,日本や韓国,アメリカで,研究者による研究の捏造等が話題になりましたが,今回のように他人の結果を利用して実験してみて,それなりに面白い結果が得られたというのは面白いことですし,その使った他人の結果がまるっきるウソなわけではない,という証明を自分がしたことにもなります.擬似科学(トンデモ科学)と科学は,このように追試や再現性を他の研究者が確認することによって区別できます.研究者によりますが,僕は研究所でじっくり論文を書くタイプではなく,しょっちゅう学会発表に行き議論する研究スタイルを取っているので,怪しければその場で指摘して分かります.今回も,僕自身の発表にも,スタッケル系のもともとの研究をしていた人たちからツッコミが入り,勉強になりました.

もし,可積分系としてのシュヴァルツシルト時空の運動方程式に興味がある方がおりましたら,御連絡下さいまし.発表時に使ったPowerPointファイルをお送り致します.もっとも,今回の応用数理学会研究部会連合発表会の論文特集号が計画されており,私も投稿します.採択されるかどうかは分かりませんが.

可積分系の人,数値解析の人,相対性理論の人などは,互いの研究の交流がほとんどなく,いろいろ問題があります.プロの研究者はとても忙しいので仕方がないので,僕のような才能のないゆっくり研究を進めている人間が橋渡しを出来ればいいなぁと思います.そのために,論文書きましょう.